「中国には奪われるな」南シナ海に沈没のF35C 米海軍、水深3000mの海底から回収
そして2日に3800メートルの海底で事故を起こして沈没しているF35Cを発見。無人深海作業艇が引き揚げ用のロープをつけ、深海作業支援艇が海面まで引き上げ、海軍艦艇に収容することに成功した。
2日に米海軍が公表した写真を見ると、収容されたF35Cはカバーで覆われているものの、両翼などは原型をとどめているとみられ、空母の飛行甲板から海面に墜ちてしばらく浮かんでいた状態のまま、海底に沈んだものとみられ、機首や両翼などの部分は致命的な破壊を免れたとみられている。
それだけに中国側に機体が渡ることを未然に防ぐことができたことに米側は安堵しているといえるだろう。
米海軍によると早期の回収に成功した機体は米軍基地に搬送して、今後詳細な事故原因の調査を行うとしている。
乗組員が事故動画を流出
今回のF35C沈没事故に関しては事故の様子を撮影した動画がインターネットなどに流出する事件も起きた。動画は飛行甲板の状況を記録するために飛行甲板に設置された「ランプ・ストライク」という装置の動画をスマートフォンで撮影したものとみられ、乗組員の関与は間違いないとして「犯人捜査」が行われた。
その結果米海軍は2月18日に軍規範違反容疑で「カールビンソン」乗組員の海軍少尉1人を含む上級兵曹など5人を訴追。艦内での懲罰委員会で職務停止、減給などの処分を受けたと発表した。
今回の動画流出はF35Cの事故に付随して起きた事案だが米海軍内の情報統制、乗組員の倫理、士気に関して「緩み」が生じていることの証左であるとして引き締めが求められる事態となっている。
ウクライナへのロシア侵攻にともない親ロシアの習近平国家主席率いる中国が台湾海峡や南シナ海での活動を活発化するとの見方もあり、米海軍は南シナ海での警戒監視を強めている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など