「中国には奪われるな」南シナ海に沈没のF35C 米海軍、水深3000mの海底から回収
甲板をオーバーランし水没するF35Cライトニング Focus Tech / YouTube
<ステルス機がオーバーランし水没、さらにその動画が流出。さらなる失態は許されなかった>
米海軍第7艦隊は南シナ海で空母への着艦に失敗して海中に沈んだ最新鋭戦闘機F35Cライトニングの捜索、回収作業を行っていたが、3月2日に海底からの機体回収に成功したと3日に発表した。
1月24日に沈没したF35Cを巡っては事故海域の南シナ海の大半で一方的に海洋権益を主張している中国がF35Cのステルス性能や最新鋭のIT技術が満載の機体への関心から独自の機体発見回収に乗り出す可能性も指摘され、米海軍は総力を挙げての回収作戦を展開していた。
水深3000から3500メートルという深海であることから数カ月要するとの見方もあった作業は事故発生から37日間で回収に成功したことで、米海軍の機体回収に対する強い決意が反映される形となった。
着艦直後に炎に包まれ海面墜落
事故は1月24日、フィリピン・ルソン島西方の南シナ海で行動中の空母打撃群の空母「カールビンソン」の艦載機で上空での訓練飛行を終えたF35Cが空母飛行甲板への着艦に失敗した。
乗組員からネット上に漏洩した動画では、事故を起こしたF35Cは着艦直後に機体後方から出火。機体は炎に包まれて飛行甲板を進み、海面に墜落した。
機体はしばらく海面に浮いていたが、その後海底に沈没した。パイロットは緊急脱出してその後救難ヘリに無事収容された。この事故で空母乗組員6人が負傷してフィリピン・マニラの病院に緊急搬送されたが、命に別状はないと伝えられた。
機体が沈んだ南シナ海は中国が一方的に自国の海洋権益が及ぶ範囲とする「九段線」の海域とされ、中国側も軍事機密が満載されたF35Cの機体に強い関心を抱いて、米軍による機体発見回収が失敗した場合には独自に回収する可能性が指摘されていた。
中国側は会見で「事故機には関心ない」との公式の立場を示していたが、額面通りには受けとられていなかった。
懸命の作業で早期回収に成功
米海軍は事故発生を重視し、深海作業支援船「ピカソ」を沖縄から事故海域に急派すると同時に無人深海作業艇など複数の作業艦艇を現場に投入して、機体の発見と回収作業を急いでいた。