最新記事

義勇兵

ウクライナ義勇兵、世界から2万人志願 カナダだけで1個大隊が現地入り

2022年3月16日(水)15時00分
青葉やまと

侵攻は「正気の沙汰と思えない」 米退役軍人も参加表明

アメリカからも、退役軍人を中心に数千人が志願している。元海兵隊員のバーガート氏は米ワシントン・ポスト紙に対し、ウクライナ侵攻への苛立ちを吐露している。「個人的には、正当な理由がないように感じられます。」「とても正気の沙汰とは思えません。異常な者たちがこの世界で狂った行いができるようであってほしくないのです。」

氏はイラク戦争で精鋭偵察部隊に所属した経験を生かしたいと考え、ウクライナ支援者のリストに登録した。直接的な戦闘には加わらないが、軍事訓練を施したり人道支援物資を輸送したりするなど、後方支援をこなしたいという。

ただし、義勇兵の増加は事態を深刻化させる危険性もはらむ。今後ロシア側も義勇兵の投入に踏み切れば、犠牲者のさらなる増加は必至だ。ロシアのショイグ国防相は3月11日、親露派が実効支配するウクライナ東部地域での戦闘に関し、中東から1万6000人が参戦を志願していると述べた。

東部で2014年から続くドンバス紛争では過去にも、極右の思想をもった海外のボランティア兵士たちが両陣営としてウクライナに押し寄せ、衝突を激化させた。現時点では両陣営の義勇兵として新たに大量の極右主義者が押し寄せたという情報はないが、今後の展開が注視される。

日本など各国政府は難色

在日ウクライナ大使館は2月末、Twitter上の投稿を通じ、日本からの義勇兵を募集した。これを受け、約70人が参加意思を表明した。その後、日本政府が志願の撤回を要請する事態となり、大使館側はツイートを削除している。

日本からの戦闘への参加は、刑法93条に規定する「私戦予備及び陰謀罪」に問われる可能性がある。条文は「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する」と定めている。

同法が実際に適用された例は極めてめずらしいが、2014年にはイスラム国の戦闘員となる目的でシリアへの渡航を企てたとして、国内の30代学生など5名が書類送検された。

過去にはヨーロッパの複数の国でも、国民が実際に起訴されている。イギリスやカナダなどでも、母国と交戦状態にない国への軍事行動に加わることは違法とみなされる。

弱きに与したいとの意思を称える声がある一方、かえって戦闘が拡大する懸念もあることから、 自国からの志願者に多くの国の政府が難色を示しているのが実情だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中