最新記事

義勇兵

ウクライナ義勇兵、世界から2万人志願 カナダだけで1個大隊が現地入り

2022年3月16日(水)15時00分
青葉やまと

イギリスからの義勇兵が、ウクライナ西部のリヴィウから東部の最前線に向けて出発する REUTERS/Kai Pfaffenbach

<ウクライナ当局は2万人の志願者が名乗り出たと発表。一部はすでにキエフ入りし、戦闘と後方支援にあたっている>

いわれのない侵略を受けるウクライナに加勢しようと、世界から義勇兵が集まっている。ウクライナ当局によると、52ヶ国から計約2万人が部隊への加勢を志願した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵攻からわずか2日後の2月26日、外国人部隊の創設を発表し志願者を募っている。その2日後には、外国人義勇兵のビザを免除した。

これに反応し、世界各地から志願者たちが名乗りを挙げている。カタールのアルジャジーラによると最も多いのはアメリカとなっており、およそ3割を占める。これに約2割のイギリスと、各1割未満のドイツ、カナダ、インドが続く。ほかにも少数ながら、クロアチ、イスラエル、ラトビア、デンマーク、オランダ、ポーランド、そして日本など、各地から希望者が集まっている。

実際の志願者数はウクライナ側でないと把握できないことから、水増しを指摘する冷ややかな見方もあった。オスロ大学過激派研究所のカツペル・レカウェク研究員はアルジャジーラに対し、実際に数万人規模の外交人義勇兵が動く事態には至らないとの見方を示している。

「広報活動でしょう。ウクライナが『どうだ、我々には世界中の人々がついているぞ』と示すためのものです......問題を国際化させようとしているのです。」

だが予想に反し、キエフおよびその郊外では、外国人による支援部隊が続々と活動を開始している。

What's the impact of foreign fighters on the war in Ukraine? | Inside Story


カナダから550人が現地入り

カナダのナショナル・ポスト紙は、カナダから550人の志願兵がすでにキエフ入りしたと報じた。

あまりの人数に、カナダからの志願兵だけで1個大隊が編成された模様だ。同紙は現地からの情報をもとに、「あまりに多くのカナダ人兵士がウクライナにいるため、彼らは独自の大隊を構成している」と述べている。大隊は通常500〜600名から成るが、まさにこれに匹敵する規模だ。メイプルリーフを配した独自の袖章には、「カナダ・ウクライナ部隊」の文字が刻まれている。

記事は「このニュースは、他国の軍隊に加わり、命を危険にさらしてロシアの侵略者たちとの戦闘に臨むという、この国の人々による歴史的なムーブメントの新たな証左である」とし、志願兵の勇気を称えた。

ウクライナのキエフ・インディペンデント紙もツイートを通じ、すでに外国人兵士たちが実戦に臨んでいると報じた。「すでに海外からの第1陣がウクライナ義勇軍の国際部隊に合流し、キエフ郊外で戦闘を行なっています。」


参加兵は、すべてが実戦経験をもつわけではない。ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレは、義勇兵のなかには戦闘未経験者も混在していると報じている。大型車両の運転免許をもっていれば物資と人員の輸送を担うなど、経験に応じた役割をこなしているという。

ウクライナ側は軍隊経験者を優先するものの、そうでない人々も歓迎する意向を示している。ことばの障壁が問題となるため、国ごとにチームを編成し、後方支援にあたることが多いようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ車販売、3月も欧州主要国で振るわず 第1四半

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中