プーチンの侵略に対抗するため武器供与に転換したドイツ
Germany Finally Turns on Russia as Putin Miscalculates Europe's Anger
ウクライナの国旗(右端)と共に立ち、連隊を示すドイツのショルツ首相(2月24日) Markus Schreiber/ REUTERS
<二度の大戦への反省から軍備の増強や武器供与に慎重だったドイツが、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして立ち上がった>
ロシアのウクライナ侵攻を受け、ドイツはここ数日、防衛・安全保障政策を大きく転換している。その一環として、オラフ・ショルツ首相は2月27日、ドイツ軍のために1000億ユーロの特別基金を設立することを表明した。
ドイツは、20世紀の二度の大戦や軍国主義に走った過去への反省から、国防費をGDPの2%に引き上げるよう求めるアメリカなどの国々からの圧力に長い間抵抗してきた。
ロイター通信によると、2021年のドイツの国防費は全体で470億ユーロで、GDPの1.5%程度にとどまっていた。
だがショルツは27日午前、ベルリンで開かれた連邦議会の特別会合で、「自由と民主主義を守るため、わが国の安全保障により多くの投資をする必要がある」と述べ、22年度のGDP比2%以上へ引き上げる方針を表明した。
また、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアの天然ガスへの依存を減らすため、液化天然ガス(LNG)ターミナル2基を建設し、天然ガスの備蓄量を増やすことも発表した。
「わが国のエネルギー安定供給を確保するため、さらに努力する」と、ショルツは議会で語った。「特定のエネルギー供給国からの輸入に依存する状態を克服するために、軌道修正しなければならない」
方針転換で武器供与も
CNNのジム・スキアットは、ロシアのウクライナ攻撃は「NATOを強化し、拡大する可能性がある」と同時に、「ヨーロッパのロシアの天然ガスに対する依存度を下げる」ため、この動きは「プーチンの誤算の最も直接的な証拠」だとした。
ウクライナからの武器支援の要請に対して慎重な姿勢をとり、ヘルメット5000個を送って失笑を買ったドイツだが、その点も大きく転換した。国防費大幅増額が発表される前日の26日、ドイツは、対戦車兵器ロケット1000発との携行式地対空ミサイル「スティンガー」500発を「できるだけ早く」ウクライナに供与することを発表した。
「ロシアのウクライナ侵攻が転機だ。これは戦後秩序全体を脅かすものだ」とショルツは声明を出した。「ウラジーミル・プーチンの侵略軍から防衛するために、ウクライナを可能な限り支援することがわれわれの義務である」
「われわれはウクライナ の側に立つ。そして、平和、自由、人権のために勇気を持って立ち上がるロシア人の側にも」
ドイツは戦後長い間、ウクライナを含む紛争地域には殺傷力のある武器を輸出しないという方針を貫いてきた。政府当局者は25日の時点でもこの点に変更はないと述べていた。