最新記事

フィギュアスケート

現役続行に前向きな羽生結弦が「銀盤の皇帝」に重なる

2022年2月15日(火)18時50分
大橋 希(本誌記者)
羽生結弦

逆転を目指して挑んだ北京五輪のフリープログラム(2月10日) Aleksandra Szmigiel-REUTERS

<ソチ五輪で団体金メダルを獲得したとき、プルシェンコは31歳だった>

北京五輪のフィギュアスケート男子シングルで4位だった羽生結弦が2月14日夕方、北京で記者会見をした。

会見の開催が報じられると、「引退発表ではないか?」とSNSに憶測が飛び交ったため、日本オリンピック委員会(JOC)が追って「メディア各社からの個別取材申請が多く、個別に対応することが困難なため実施するもので、羽生選手からの発表会見ではございません」と説明。これに多くのファンは安堵し、実際の会見内容も「現役続行」に前向きなものだった。

会見の冒頭、司会者の「質問のある方は挙手を」という言葉に、羽生は真っ先に手をあげた。そして「質問で来ないかもしれないので」と前置きし、金メダルを取ったネイサン・チェンは「本当に素晴らしい演技だった」と称え、スタッフへの感謝を述べた。周囲への気配りを忘れない彼らしい始め方だった。

フリーで挑戦したクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)については「満足した4回転半だと思っています」、試合後初めてこの日に練習リンクで滑ったことについては「僕は僕のフィギュアスケートが好きだなと思えた練習だった」。こうした答えから伝わってきたのが、大変な努力をしてきたプライドと自信、今の時代にぴったりなラブ・マイセルフ(自分を愛すること)の考え方だった。

気になる今後については、「このオリンピックが最後かと聞かれたら、ちょっと分かんないです。(中略)怪我してても立ち上がって挑戦するべき舞台と思います。フィギュアスケーターにはほかの舞台はないので、すごく幸せな気持ちになっていたので、また滑ってみたいなという気持ちはもちろんあります」と述べた。

フリー前日の公式練習で捻挫し、今も強い痛み止めを許容量以上飲んでいると明かした羽生にとってはけがの治療が最優先だろうが、近々引退するつもりはないようだ。

会見の後はテレビ局の個別取材にも応じたが、その中で印象的な言葉があった──足首の状態は良くないが、20日のエキシビションでは「体を痛めつけてでもやりたい表現、見てもらいたい演技があるので、今はとにかくそこに全身全霊を込めたいなと思っています」(NHK)。

こう話す羽生を見て、彼が幼い頃から憧れ、交流のあるロシアの元フィギュア選手、エフゲニー・プルシェンコを思い浮かべた人もいたのではないか。彼は2006年トリノ五輪の金メダリストであり、02年ソルトレークシティー五輪と10年バンクーバー五輪で銀メダル、14年ソチ五輪で団体金メダルに輝いた(個人種目は棄権)、「銀盤の皇帝」と呼ばれた人だ。

そのプルシェンコが引退を表明したのは17年3月。出場を目指していた平昌五輪の1年ほど前で、彼はこのとき34歳。ソチ五輪では31歳だった。そして次の26年冬季五輪(ミラノ・コルティナダンペッツォ)のとき、羽生は31歳だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中