渦中のウクライナ大統領が「まだ大丈夫」と、アメリカに不満顔の理由
Kyiv's Domestic Worries
「持久戦」に焦りは禁物
バイデンとゼレンスキーのアプローチは一見、違って見える。しかし、こうした表向きの違いが実際はウクライナに有利に働くかもしれない。
ウクライナ情勢に詳しい、シンクタンク「大西洋協議会」のエイドリアン・カラトニッキー上級研究員はこう指摘する。
「ロシアの侵攻をめぐるバイデンとゼレンスキーの危機感の差は、ウクライナにはプラスに働く。第1に、バイデンの強硬姿勢が軍事的支援と制裁の強化に対する同盟国からの支持を拡大する。その一方で、ゼレンスキーが慎重な姿勢を示すことがパニックを防ぎ国民を結束させるのに役立っている」
各国首脳が毎週のようにウクライナを訪問しているほか、国際社会の激しい怒りやメディアがキエフに殺到していることも、ロシアによる新たな軍事作戦の可能性を低下させていると言えるだろう。
ウクライナでは有事に備えて大勢の一般市民が民兵部隊「領土防衛隊」に志願し、応急処置の方法などの講習会に参加している。こうした市民の結束や即応態勢の強化に、同盟国からの兵器供与が加わり、ウクライナの力が増す。
ロシアへの警戒を緩めないアメリカの言動は、確かにウクライナにプラスになっている。
その一方で、ウクライナ経済にとっては深刻なリスクもはらんでいる。
ウクライナの通貨フリブナは、2015年2月の2度目の和平合意を前に東部の親ロシア派との戦闘が起きたせいで急落。それ以降、為替レートは過去最低水準の1ドル=28フリブナ前後で推移している。
性急に事を進めて外国投資家が逃げるような事態に陥るのを避けたいとゼレンスキーが考える可能性は十分にあり、その場合、交渉が長期化して同盟国の注目が別の新たな危機に移るのは必至だ。
ロシアは安全保障をめぐるアメリカの提案を再度はねつけており、緊張緩和の手だてはなかなか見えない。ロシア軍はウクライナとの国境の軍備増強を続けており、そうした圧力攻勢が非常に長引きかねないことをゼレンスキーは理解している。
ウクライナは今「持久戦」の真っただ中にある。時期尚早なパニックはウクライナ経済の破綻を招きかねない。
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