チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を
THE ROYAL PLAN
かつての月面着陸であれ、新型コロナウイルスのワクチン開発であれ、人間はとても解決できそうにない難問を解決する能力を証明してきた。故郷である地球を守り抜きたいなら、私たちはその能力を今一度証明しなければならないし、そうできると私は信じている。
今が運命の分かれ目と信じる根拠は大いにある。
2021年11月に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)で合意が採択されたのは、有益で重要な進展だった。COP26では気候危機の深刻さを国際間で改めて認識し、各国首脳は説明責任を負うことに対して勇気と積極性を示した。無為無策が子供や孫の世代に及ぼす影響に焦点が置かれたのは、当然だろう。
現実を無視してはいけない
だが、うわべが必ずしも当てにならないことを、私たちは知っている。これまでも国際会議で同様の合意が採択されたりメディアで報じられたりしたが、結局目標は達成されず、期待外れに終わった。
だが、今回は勢いを失うわけにはいかない。21年を偽りの希望の年にしてはならない。気候変動と生物的多様性の喪失は脆弱な土地に住む数千万人の暮らしと生業に打撃を与え、彼らの居住地を人が住めない場所に変えている。この事実を無視し続けることは、断じてできない。
偽りの希望の爪痕を、私はこの目で見た。11月には世界で最も水の乏しい国の1つであるヨルダンでキリストが洗礼を受けた場所に立ち、水資源の枯渇を目の当たりにした。エジプトでは生態系が極めて脆弱なナイル川デルタの水資源と農業に気候変動が及ぼす壊滅的打撃について、話を聞いた。バルバドスでは国の存在そのものを脅かす海面上昇への不安を、住民からじかに聞いた。
こうした例は氷山の一角でしかない。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最終報告書は、人間が過去2000年において例を見ないスピードで地球の気温を上昇させ、気象や気候の極端な現象を引き起こしていると結論付けた。
明らかなのは、私たちの行動がカギを握っているということだ。なすべきことは分かっている。人口が増加し限りある資源への需要が高まるなか、私たちは二酸化炭素(CO2)の排出量を削減しなければならない。火力発電所などから排出され既に大気中にあるCO2の回収にも、取り組む必要がある。CO2に適切な価格を付ければ、回収はより経済的に行うことができる。
数十億年の進化を経た今も、人間にとって最高の教師は自然だ。地球でよりサステナブル(持続可能)に生きる方法を模索する際にも、自然に導きを求めたい。