チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を
THE ROYAL PLAN
各国の連携も欠かせない。脅威の規模と範囲の大きさを思えば、あらゆる産業分野、あらゆる国の積極的な関与がなければ、地域の、そして世界の温暖化問題の解決は望めない。
そこで中核的な役割を果たすのは世界の民間部門の力を結集するための戦時下型の作戦だろう。現在の化石燃料を土台とした経済から真に再生可能でサステナブルな経済へと移行するには、兆ドル単位の費用がかかるからだ。世界全体のGDPを上回るこれほどの資金が必須なのは、増える一方の債務を背負い、「グリーン化」が資金的に難しい国があまりにもたくさんあるからだ。
戦時下型の作戦とはどのようなものなのか。COP26において私は、サステナブルな未来の建設には当代随一の成長のタネがあると考える理由について話をした。こう考える主な理由は3つある。いずれも成功の可能性を高めるとともに、国家と産業、投資のロードマップの真の一致をもたらす要素だ。
まず第1に、サステナブルな経済への移行と革新的な新技術を市場投入するプロセスの加速に何が必要か、世界のあらゆる産業は具体的に提示する必要がある。第2に民間投資は、サステナブルな経済への移行作業を資金面で支え、投資家の信頼を高めて金融リスクを減らすことにより、移行戦略を後押しすべきだ。
第3に、世界的大企業の経営者や機関投資家は、各国が提出した「国が決定する貢献(NDC)」のみならず、長期的な投資を行うための信頼感を与えてくれるような明確な政府からの市場シグナルを求めている。
どちらのコストが大きいのか
私が世界経済フォーラムと共に立ち上げた「サステナブルな市場イニシアチブ」では、こうした枠組みを含む自然と人間、地球のためのロードマップ「テラ・カルタ憲章」を起草した。ここでは移行を加速するための100近い具体的な行動案が示されている。
エネルギーや農業、交通運輸、ファッションといった、温室効果ガスを最も排出している10の産業のサステナブル経済への移行に向けた投資を促進する活動も行っている。現在の世界のサプライチェーンを見ると、これら産業のサステナブル化は世界のあらゆる国、あらゆる製造業者に影響を与えると思われる。
何もしないことの代償は最終的に、行動に必要なコストをはるかに上回ることだろう。若い世代はこの問題に関する行動の遅さに、当然ながらいら立ちを示している。チャンスを1つ逃すごとに、私たちの世代の失敗が若い世代やまだ生まれていない世代に残す重荷は増えていく。