最新記事

提言

チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を

THE ROYAL PLAN

2022年2月11日(金)16時47分
チャールズ英皇太子

220215P46_CLS_04v2.jpg

PUTU SAYOGAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

各国の連携も欠かせない。脅威の規模と範囲の大きさを思えば、あらゆる産業分野、あらゆる国の積極的な関与がなければ、地域の、そして世界の温暖化問題の解決は望めない。

そこで中核的な役割を果たすのは世界の民間部門の力を結集するための戦時下型の作戦だろう。現在の化石燃料を土台とした経済から真に再生可能でサステナブルな経済へと移行するには、兆ドル単位の費用がかかるからだ。世界全体のGDPを上回るこれほどの資金が必須なのは、増える一方の債務を背負い、「グリーン化」が資金的に難しい国があまりにもたくさんあるからだ。

戦時下型の作戦とはどのようなものなのか。COP26において私は、サステナブルな未来の建設には当代随一の成長のタネがあると考える理由について話をした。こう考える主な理由は3つある。いずれも成功の可能性を高めるとともに、国家と産業、投資のロードマップの真の一致をもたらす要素だ。

まず第1に、サステナブルな経済への移行と革新的な新技術を市場投入するプロセスの加速に何が必要か、世界のあらゆる産業は具体的に提示する必要がある。第2に民間投資は、サステナブルな経済への移行作業を資金面で支え、投資家の信頼を高めて金融リスクを減らすことにより、移行戦略を後押しすべきだ。

第3に、世界的大企業の経営者や機関投資家は、各国が提出した「国が決定する貢献(NDC)」のみならず、長期的な投資を行うための信頼感を与えてくれるような明確な政府からの市場シグナルを求めている。

どちらのコストが大きいのか

私が世界経済フォーラムと共に立ち上げた「サステナブルな市場イニシアチブ」では、こうした枠組みを含む自然と人間、地球のためのロードマップ「テラ・カルタ憲章」を起草した。ここでは移行を加速するための100近い具体的な行動案が示されている。

エネルギーや農業、交通運輸、ファッションといった、温室効果ガスを最も排出している10の産業のサステナブル経済への移行に向けた投資を促進する活動も行っている。現在の世界のサプライチェーンを見ると、これら産業のサステナブル化は世界のあらゆる国、あらゆる製造業者に影響を与えると思われる。

何もしないことの代償は最終的に、行動に必要なコストをはるかに上回ることだろう。若い世代はこの問題に関する行動の遅さに、当然ながらいら立ちを示している。チャンスを1つ逃すごとに、私たちの世代の失敗が若い世代やまだ生まれていない世代に残す重荷は増えていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オーストラリア年次予算、2年連続で黒字見込み 14

ビジネス

SUBARU、トヨタと共同開発のEV相互供給 26

ビジネス

対仏投資促進イベント、160億ドル獲得見込み 昨年

ワールド

イスラエルの格付け据え置き、見通しネガティブ=ムー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中