最新記事

航空機

航空機が折り重なるイラン空港の異様な衛星画像は何を意味するのか

Pile of Planes 'Cannibalized' for Parts at Iran Airport Stuns Internet

2022年2月9日(水)18時40分
レベッカ・フラッド

テヘラン近郊のメヘラーバード国際空港。飛行機が折り重なるように駐機する異様な光景の理由は? ©︎2022 CNES/Airbus, Maxar Technolofies-Google Earth

<そこは経済制裁下で40年間、古い飛行機のつぎはぎで運行してきた解体の現場、航空機の墓場だ。飛べなくなるのも時間の問題かもしれない>

アメリカなど西側諸国から経済制裁を受けながら生き延びるのは容易ではない。イランの航空会社がそのいい例だ。厳しい制約のなかでなんとか運航を続けているが、イランの空港に駐機している数多くの航空機の画像がインターネットで公開され、波紋を広げている。

話題になっているのは、テヘランにあるメヘラーバード国際空港を上空から撮影した写真で、今年1月にソーシャルニュース・サイトのレディットに投稿された。サイト内のフォーラム「Interesting As F*** 」にアップロードされた写真には、1万以上の「いいね!」がついた。

この画像は、2022年に宇宙技術企業マクサー・テクノロジーズがグーグル・マップ用に撮影したもの。大小合わせて20機ほどの飛行機がメヘラーバード国際空港の敷地に雑然と並んだ様子が写っている。

一部のレディット・ユーザーからは不信の声が上がった。「これが現在、使われている空港であるわけがない......そうだろう?」と、その1人、Upbeat_Giraffe8364は問いかけた。

正常な状態には見えないこの光景は、まさにイランの瀕死の航空業界の現実を露わにしている。制裁のために航空機の部品や新型機の発注ができないため、中古の航空機をバラバラにされ、部品を再利用しているのだ。

レディット利用者の一人、AntiheroZer0はこう指摘する。「青い屋根の建物の周りを見て。地面にエンジンがずらりと並べられている」

空港が飛行機の墓場

Houdinii1984も指摘した。「左端にある中ぐらいの飛行機は、翼の一部が欠けている。部品を再利用しているというのは本当だったんだ」

Scrotius_Minimusもコメントする。「747機をよく見て。エンジンカウルが開いている。おそらくエンジンは取り外されているね。部品として最初に取り出されるのはエンジンだから」

Sofarbeyondfuckedはこう付け加えた。「大正解だ。ここに見えている飛行機は、他の航空機を修理するために、部品を取られている。飛行機の共食いってわけだ」

1969年から1978年までイラン航空にパイロットとして勤め、メヘラーバード空港を利用した経験のあるロス・アイマーの説明によれば、写真の飛行機はすべて民間の旅客機で、機体はボーイングやエアバス、一部ロシア製だという。

ユナイテッド航空でもパイロットをしていたアイマーは本誌にこう語った。「この写真によると、エンジンも部品も足りないので古いロシアの航空機のものを再利用しているのだろう」

「明らかにどの飛行機も退役したジャンク品で、この場所は廃品置き場といったところだ。業界内では飛行機の墓場と呼ばれている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で陸海軍・ロケット部隊の合同演習

ビジネス

テスラ第1四半期納車台数は前年比マイナスか、競争激

ビジネス

トランプ氏のロシア産原油関税警告、市場の反応は限定

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中