女性の政治参加が進まない背景にある、日本の社会科教員の女性比率の顕著な低さ
教員の性別構成は教科によってかなりばらつきがある Drazen Zigic/iStock.
<他の主要国と比較すると、日本の社会科教員の女性が占める割合は特異的に低い>
毎年、国別のジェンダー平等指数が公表される。日本の現状が壊滅的なのは毎年のことだが、とくに政治分野が酷い(2021年は156カ国中120位)。国会議員など、政治家の女性比率が著しく低いためだ。
これがなぜかについて、女子は頭を押さえつけられて育つとか、政治の話を女子がすると変な目で見られるとか、世間一般で言われることを反すうしてもあまり意味はない。井戸端談義ではなくデータで可視化でき、かつ政策で変えることができるような要因に注目すべきだ。例えば、進路選択を控えた女子生徒が目にする職業モデルはどうだろう。政治や経済について語る女性、具体的には学校で社会科を教える女性教員だ。こういうロールモデルに多く接するならば、女子の政治的関心も高まると見られる。
文科省の『学校教員統計』に、各教科を担当している教員のパーセンテージが出ている。2019年の高校のデータを見ると、国語を担当している教員の割合は男性で9.0%、女性で19.2%。ベースの本務教員は男性が15万2446人、女性は7万1592人なので、先ほどの比率をかけて国語担当教員の実数を出すと男性は1万3720人、女性は1万3746人と見積もられる。ほぼ半々だ。
他の教科はどうか。同じやり方で各教科の担当教員の実数を男女別に出し、内訳をグラフにすると<図1>のようになる。
国語は男女ちょうど半々だが、教科によって異なることが分かる。男性より女性が多い教科は音楽、書道、家庭、福祉で、それ以外は男性の方が多い。よく知られているが、数学や理科教員の女性比率は低い。理系に進む女子を増やすに当たって、これをどうにかしないといけないことはしばしば指摘される。
しかしもっと女性比率が低い教科がある。それは公民だ。公民を教える教員のうち女性は14.0%で、どの教科よりも低い。政治や経済について説く女性のモデルを、学校で女子生徒になかなか見せられない。こういう現実がデータで分かる。