最新記事

ステルス・オミクロン

次はステルス・オミクロン「BA.2」が世界で優勢になる、WHO幹部が警告

Stealth BA.2 Omicron Variant Found in 67 Countries Will Become Dominant, Says WHO Expert

2022年2月9日(水)16時24分
ロバート・リー

ワクチン接種が進んだことからマスクなしのコンサートも解禁になったデンマークだが(写真は2021年9月21日) Ritzau Scanpix/Olafur Steinar Gestsson/REUTERS

<現在のオミクロン株よりさらに感染力が強いとみられるBA.2が、規制のガードを下げたデンマークやイギリス、アメリカなどで急増の気配を見せている。オミクロン禍には第2章があるのかもしれない>

新型コロナウイルスのオミクロン株派生型「BA.2」、通称ステルス・オミクロンが、欧州とアジアで急速に拡大しており、現在のBA.1に代わる優勢な変異株になる可能性がある。BA.2は、現在までに67カ国で検出されている。

世界保健機関(WHO)の地域事務局長を務めるドリット・ニッツァン博士はエルサレム・ポスト紙に対し、BA.2の今後の推移について、デンマークや英国で見られているように、一定の閾値を超えたら、この派生型が新型コロナウイルスの新たな優勢株になると予想した。

新型コロナウイルスの変異株データサイト「アウトブレイク・ドット・インフォ」によれば、3つあるオミクロン株派生型のひとつであるBA.2は、1月31日現在で、デンマークにおける新規感染者の82%を占めている。デンマークはつい最近、すべてのコロナ規制の解除を発表したばかりだ。

コペンハーゲン出身の疫学者で米国ジョージ・ワシントン大学ミルケン公衆衛生学研究所教授のローン・シモンセンは、本誌に対して次のように話した。「BA.2はすでにデンマークで優勢になっているが、重症者の増加は見られず、ICU入室者は減少しつつある。私の見解では、BA.2は、拡散は速いものの、これまでよりも致死性の高い変異株というわけではない」

規制緩和の間隙を縫って急増

アウトブレイク・ドット・インフォによれば、米国でBA.2が確認された州の数は42に増えている。ただし現在のところは、米国における新規感染者のうち推定1%を占めるにすぎない。米国でも、多くの州で新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが弱まりつつあり、規制も解除され始めている。

一方イギリスでは、2月3日現在、新規感染者の9%がBA.2によるものだった。新規感染者の1%にすぎなかった1月中旬以降、急激に増加している。

全世界で見ると、ステルス・オミクロンは新規感染者のおよそ18%を占めている(2月3日現在)。ステルス・オミクロンという呼称は、PCR検査で従来のオミクロン株と区別しにくいことからついた。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院でワクチン疫学を研究するマーク・ジット教授は、本誌に対して次のように話した。「デンマークにおいて1月上旬にBA.2が急激に増加していたことから、BA.2はBA.1より感染力が強い可能性がすでに示唆されていた。現在では、英国をはじめとする各国の分析により、それが裏づけられている」

オックスフォード大学で進化とゲノミクスを研究するアリス・キャツォウラキス教授は、ひとつの国で見られる傾向が、別の国でも繰り返されるとは限らないと指摘した上で、次のように述べた。「元のオミクロン株に比べても感染力はやや強いようであり、優勢になる可能性は高い」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中