最後のエアバスA380、空に残したメッセージ
愛されつつも、時代の変化に追いつけず
生産終了に至った背景には、航空各社の戦略の変化がある。A380の開発当初、各社はハブ&スポーク構想を戦略の柱としていた。世界の主要なハブ空港同士を巨大な旅客機で結び、そこから各地方の空港へと小型機で分散させる方式だ。しかし近年ではLCC(格安航空会社)などの台頭もあり、地方の空港同士を比較的小型の機体で結ぶポイント・ツー・ポイント方式のニーズが高まりつつある。
ニュージーランド・ヘラルド紙は、「16年間に252機を生産したエアバス社は今、スーパージャンボの時代は終わったと語る」と報じている。さらに同紙は、「航空各社は小型で燃費に優れた航空機、そして運航スケジュールの柔軟性を求めており、853名乗りの飛行機の時代は終わりを告げた」とも分析している。
なお、853名は全席エコノミー編成を想定した理論上の数字であり、実際の席数はこれを下回る。ファーストクラスを廃止しても、これまで実現した最大席数は615席に留まる。
カタール航空のアクバル・アル=バーキルCEOは11月、シンプル・フライング誌に対し、「2002年の立ち上げ当時はよかった。しかし残念だが、燃料の高騰と設計ミスを受けて我々は、大きな間違いだと考えている」と厳しい意見を語っている。パンデミックによる旅客需要の減少も、大型機への逆風となった。
一方、12月にはカタール航空はA350の塗装問題を受け、A380を代打に起用する方針を打ち出した。これとは別にシンガポール航空はインド路線などにおいて、年末年始の需要に対応すべくA380を復帰させた。生産が終わっても、一線で活躍する機会はまだまだ大いにありそうだ。