策士プーチンがウクライナ危機で狙っていること
The West Fell Into Putin's Trap
そうではなく、ルールを語ればいい。
いい例が1月にロシアを訪問したドイツのアンナレーナ・ベーアボック外相だ。彼女が語る正論に、ロシアの外相セルゲイ・ラブロフはたじろいだ。まずい、この議論だとロシアはのけ者にされ、大国の地位を脅かされると気付いたのだろう。
3つ目。プーチンが何を望んでいるのかを、もっと真剣に考慮する必要がある。
もちろん彼の勝手な振る舞いは許せないが、多少ともまともに振る舞えば、褒美を与えてもいい。
例えば、彼はアメリカ大統領と一緒に対等な立場でステージに上がり、その雄姿をロシア国民に見せつけたいと思っている。ならば、彼が行いを改めない限り首脳会談には応じないと(もちろん水面下で、しかしきっぱりと)通告すればいい。
つまり信賞必罰。その意味するところはプーチンもよく理解しているはずだ。
「売れるものをただでやるな」は、そもそもロシア外交の伝統だ。肝心なのは、全てを水面下でやること。そうすればプーチンは、メンツをつぶされることなく行いを改められる。
ただ、こうして考えると別な疑問が湧いてくる。そもそも効果的な外交は公の場で可能なのか?
今は何でも筒抜けで、重大な交渉を内密に進めることは不可能に近い。おかげで透明性と責任が担保されるのは事実だが、微妙な調整や賢い戦略はやりにくくなる。
プーチンを勝たせてはいけない。その代償を払うのは西側の私たちなのだから。
2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら