現場の医師が警鐘「オミクロン株で見落とされていたこと」 感染爆発で明るみになった課題とは?
その証拠に、冒頭で同院には6人のオミクロン株の感染患者が入院していると紹介したが、2人の患者では酸素吸入が必要な肺炎を起こしていて、このような患者が次第に増えてきている。
さらに、この2年間の経験から、コロナウイルスでは新規感染者と重症者数の増え方には、タイムラグがあることがわかっている。今は軽症が多くても今後どのようになるかは、わからないのだ。
現在、倍々で増えている新規感染者数。これを止めるために期待されているのが、ワクチンの3回目接種、いわゆるブースター接種だ。埼玉医科大学ではすでに医療従事者への3回目接種が進み、岡医師も昨年末に接種を終えている。
「高齢者や病気などで免疫が弱い方へのブースター接種は、加速したほうがいい。今回は、全体的に国の進め方が遅い気がします。もっとスピードを上げないと」
改めて押さえたいワクチンの有効性
ここでワクチンの有効性について、改めて整理しておきたい。
現在流通しているファイザー社、モデルナ社のmRNAワクチンは、もともとは従来株に対して作られたもので、2回接種を終えればその予防効果は9割ほどあった。この予防効果というのは、「感染を予防する効果」と「重症化を予防する効果」の両方だ。つまりは、人にうつすリスクも下げ、重症化させない効果もあったわけだ。
ところが、重症化しやすいデルタ株になると、感染を予防する効果より、重症化を予防する効果で意味合いが大きくなった。その背景にあるのはデルタ株の性質もあるが、それよりむしろ大きいのはワクチン自体の問題、接種からの時間経過によって抗体値が下がってきたという事実だ。岡医師が説明する。
「さらにオミクロン株に関して言うと、ワクチンを2回接種してから半年以上過ぎた人では、感染予防効果は2~3割程度に落ちてしまうことがわかっています。一方で、重症化を予防する効果は7割ほど保たれていました」
この状態でブースター接種をすると、一時的だが感染予防効果が7割程度まで回復する。感染性が高いオミクロン株の流行を抑える有力な要素になる可能性があるのだ。ちなみに重症化予防効果も9割ほどに戻る。4回目以降のことはわからないが、少なくともブースター接種の必要性は、オミクロン株が主流となった現時点でかなり大きいといえる。
「このワクチンは局所の痛みなどの副反応が強めなのがネック。私も軽い副反応が出ました。イスラエルはすでに4回目の接種を始めていますが、これを打ち続けるのかと思うと、正直嬉しくないです。そこは製薬企業側に副反応を軽くするなどの進歩を期待したいですね」