現場の医師が警鐘「オミクロン株で見落とされていたこと」 感染爆発で明るみになった課題とは?
そのうえで、岡医師はこう訴える。
「皆さんには、"院内クラスターを起こした病院=悪"だと決めつけないでほしいのです。世間がそういう風潮になれば、現場も萎縮してしまい、患者さんの受け入れに二の足を踏む状況になってしまいかねません」
新型コロナウイルスの従来の特徴として、感染していても症状がない無症候性のケースが多いことが挙げられる。さらにワクチンによるマスキング効果も加わっている。
いずれにせよ、無症状では感染しているかどうかわからないし、症状があってもオミクロン株の場合は、発熱、咳、喉の痛みなどの軽い症状でとどまることが多く、インフルエンザや風邪と見分けることが難しい。知らない間に感染し、症状がない(あるいは軽い)状態で病院を受診した結果、病気を持ち、免疫力が落ちている患者たちに感染を広めてしまう――。そういう事象が院内クラスターのきっかけになりかねない。
実際、同院では流行状況が悪化してくると入院前にPCR検査を行っているが、別の病気で来院した人に感染が見つかるケースが、幾度かあったという。
入院予定のある人はとくに注意を
感染がわかった場合、当然ながらコロナ治療が優先され、本来の病気の治療は先延ばしになってしまう。自分にとっても、他人にとってもリスクが大きいからこそ、岡医師は入院の予定がある人に対しては、節度ある行動を呼びかける。
「少なくとも入院予定がある患者さんは、入院10日前以降は大勢の会食など、感染リスクが高まるようなことは控えてほしい。病院の食事はおいしくないから、入院前に好きなものを食べておきたいという気持ちはよくわかります。でも、今はがまんするか、家族など少人数での会食にとどめてください」
これは、外来で治療を受けている患者も同様だが、一方で自己判断による受診控えは避けなければならない。
「通院が不安なのはわかりますが、必要な通院はそのまま継続してください。気になる方は主治医にしっかり相談することです」
なお、入院、通院にかかわらず、病院にかかっている患者は、打てない事情がある人以外はコロナワクチンを接種しておいたほうがいいという。
さて、世の中では「オミクロン株は、もはやふつうの風邪と変わらない」と話す人たちも出てきているが、岡医師はそこに危機感を募らせる。
「まず、感染性の強さが違います。オミクロン株は水痘(水ぼうそう)のような空気感染を起こすウイルスと同じレベルの感染力を持っています。一方、重症化しにくいというのはあくまでもデルタ株との比較であって、従来株とあまり変わりません。重症化率が4割減ったとしても、感染者数が倍になれば重症者数は1.2倍になります」