最新記事

韓国

韓国の「防疫パス」早々と見直し 反日集会もソーシャルディスタンス策の影響受ける

2022年1月26日(水)16時50分
佐々木和義

韓国政府の新たな行動規制に断髪して抗議する個人事業主の女性 REUTERS/Kim Hong-Ji

<韓国政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するソーシャルディスタンス施策の一環として「防疫パス」を導入したが、早々と見直しを余儀なくされた...... >

世界各地で猛威をふるう新型コロナのオミクロン株は、韓国でも急速に拡大し、25日の新規感染者は、13,004人でこれまでで最多となっている。

こうした中、韓国政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止策として「防疫パス」を導入し、防疫パスを所持しない人のデパートやスーパー、飲食店、学習塾など生活施設への入場を制限したが、早々と見直しを余儀なくされた。市民団体が提訴した防疫パスの執行停止を裁判所が認める判断を下したのだ。

また、日常生活を制限するソーシャルディスタンス施策は、反日団体の活動にも制限を加えている。

防疫パスを所持なしでは大型店舗に入れない

2021年12月13日、韓国政府は防疫パスを導入した。コロナ・ワクチンの2回目の接種を終えてから180日以内の人や3回目のブースター接種を終えた人、PCR検査で陰性が確認された人、ワクチン接種対象外の人などに対して発行する証明書で、対象店舗の入口に設置された認証装置に携帯電話でQRコードをかざすと、防疫パスの有無が表示される仕組みである。

政府は不特定者が利用する施設に入場する際、防疫パスの提示を義務付けた。併せて各種会合の人数制限を強化した。会食などの私的会合は防疫パス所持者を4人以下に制限し、防疫パスを所持しない人は会食への参加を禁止して、飲食店やカフェなど1人利用のみ認める方針を打ち出した。また各種イベントの人数制限も強化した。

1月3日以降、防疫パスを所持しない人の施設利用を制限した。デパートやスーパー、ショッピングモールなど3000平米以上の大型店舗への入場を原則的に認めない方針で、一週間の準備期間を設けた上で、1月10日以降、防疫パスを所持していない人は大型店に入店できなくなった。

飲食店やカフェなど、1人での利用は認められるが、防疫パスを所持していない人の入店を拒絶する店が増えはじめ、インターネットで1人利用が可能な飲食店の情報を共有する人たちが現れた。

韓国政府の新たな行動規制に抗議のために断髪する個人事業主 1月25日 REUTERS/Kim Hong-Ji


受験生の子を持つ親などが反発し、集団訴訟に

一方、市民の反発が相次いだ。防疫パスを所持しない受験生が学習塾などを利用できなくなる。また、妊産婦はワクチン未接種者が多く、1回目のワクチン接種で異常反応が出て2回目の接種を見送った人たちもいる。2回目のワクチン接種から180日を過ぎた人たちもデパートやスーパーで買い物ができなくなるからだ。

まずは、全国父兄団体連合の受験生の子を持つ親や学習塾経営者らが学習施設への防疫パスの適用停止を求める訴訟を提起した。

訴えを受けたソウル行政裁判所は1月4日、「回復し難い損害を予防するため緊急措置を取る必要がある」と政府の方針を許容しながらも「未接種者が塾などを利用する権利を制限する不利な差別」だとして、父兄団体等の訴えを認める判断を下し、政府は即時広告を行いながらも防疫パスの学習施設への適用を停止した。

続いて医師など市民1023人が、防疫パスの停止を求める集団訴訟を起こすと、ソウル行政裁判所は1月14日、原告の訴えを概ね認める判断を下した。

政府はソウル行政裁判所の判断に遺憾の意を表明したが、18日以降、マスクの常時着用が可能なデパート、大型スーパー、大型店、塾、博物館、映画館・公演施設などへの防疫パスの適用を解除した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ外相「黒海合意は世界の食糧安保のため」、停戦楽観

ワールド

ロシア・ウクライナ、黒海・エネ停戦で合意 ロ「制裁

ビジネス

海外動向など「不確実性高い」、物価に上下のリスク=

ビジネス

企業向けサービス価格、2月は3%上昇 人件費などコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 10
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中