韓国の「防疫パス」早々と見直し 反日集会もソーシャルディスタンス策の影響受ける
韓国政府の新たな行動規制に断髪して抗議する個人事業主の女性 REUTERS/Kim Hong-Ji
<韓国政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するソーシャルディスタンス施策の一環として「防疫パス」を導入したが、早々と見直しを余儀なくされた...... >
世界各地で猛威をふるう新型コロナのオミクロン株は、韓国でも急速に拡大し、25日の新規感染者は、13,004人でこれまでで最多となっている。
こうした中、韓国政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止策として「防疫パス」を導入し、防疫パスを所持しない人のデパートやスーパー、飲食店、学習塾など生活施設への入場を制限したが、早々と見直しを余儀なくされた。市民団体が提訴した防疫パスの執行停止を裁判所が認める判断を下したのだ。
また、日常生活を制限するソーシャルディスタンス施策は、反日団体の活動にも制限を加えている。
防疫パスを所持なしでは大型店舗に入れない
2021年12月13日、韓国政府は防疫パスを導入した。コロナ・ワクチンの2回目の接種を終えてから180日以内の人や3回目のブースター接種を終えた人、PCR検査で陰性が確認された人、ワクチン接種対象外の人などに対して発行する証明書で、対象店舗の入口に設置された認証装置に携帯電話でQRコードをかざすと、防疫パスの有無が表示される仕組みである。
政府は不特定者が利用する施設に入場する際、防疫パスの提示を義務付けた。併せて各種会合の人数制限を強化した。会食などの私的会合は防疫パス所持者を4人以下に制限し、防疫パスを所持しない人は会食への参加を禁止して、飲食店やカフェなど1人利用のみ認める方針を打ち出した。また各種イベントの人数制限も強化した。
1月3日以降、防疫パスを所持しない人の施設利用を制限した。デパートやスーパー、ショッピングモールなど3000平米以上の大型店舗への入場を原則的に認めない方針で、一週間の準備期間を設けた上で、1月10日以降、防疫パスを所持していない人は大型店に入店できなくなった。
飲食店やカフェなど、1人での利用は認められるが、防疫パスを所持していない人の入店を拒絶する店が増えはじめ、インターネットで1人利用が可能な飲食店の情報を共有する人たちが現れた。
受験生の子を持つ親などが反発し、集団訴訟に
一方、市民の反発が相次いだ。防疫パスを所持しない受験生が学習塾などを利用できなくなる。また、妊産婦はワクチン未接種者が多く、1回目のワクチン接種で異常反応が出て2回目の接種を見送った人たちもいる。2回目のワクチン接種から180日を過ぎた人たちもデパートやスーパーで買い物ができなくなるからだ。
まずは、全国父兄団体連合の受験生の子を持つ親や学習塾経営者らが学習施設への防疫パスの適用停止を求める訴訟を提起した。
訴えを受けたソウル行政裁判所は1月4日、「回復し難い損害を予防するため緊急措置を取る必要がある」と政府の方針を許容しながらも「未接種者が塾などを利用する権利を制限する不利な差別」だとして、父兄団体等の訴えを認める判断を下し、政府は即時広告を行いながらも防疫パスの学習施設への適用を停止した。
続いて医師など市民1023人が、防疫パスの停止を求める集団訴訟を起こすと、ソウル行政裁判所は1月14日、原告の訴えを概ね認める判断を下した。
政府はソウル行政裁判所の判断に遺憾の意を表明したが、18日以降、マスクの常時着用が可能なデパート、大型スーパー、大型店、塾、博物館、映画館・公演施設などへの防疫パスの適用を解除した。