最新記事

感染症対策

爆発的に感染拡大するオミクロン株でも集団免疫は無理? 「変異」がネックに

2022年1月24日(月)18時07分
オミクロン株陽性のイメージ

新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株は、従来株をはるかにしのぐスピードで感染を広げている。写真はオミクロン株陽性のイメージ。15日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株は、従来株をはるかにしのぐスピードで感染を広げている。しかし、十分な数の人々が免疫を獲得して感染拡大が止まる「集団免疫」の達成がオミクロン株によって容易になるとの見方に専門家は否定的だ。

公衆衛生当局は流行の早い時期から、人口の十分な割合がワクチンを接種するか、ウイルスに感染すれば集団免疫の状態に達する可能性があるとの期待を示してきた。

だが、この1年間に新型コロナウイルスが次々と新しい株に変異し、ワクチン接種済みの人や既に感染した人も再感染するようになったため、こうした希望に影が差した。

昨年末にオミクロン株が出現して以降、あらためて集団免疫達成に期待を抱くようになった医療当局者もいる。

オミクロン株は感染拡大が速く、症状が軽いことから、近いうちに十分な数の人々が比較的軽い症状のままコロナに感染し、免疫を獲得するのではないかという理屈だ。

ところが、専門家によるとオミクロン株の感染が速いのは、ワクチン接種済みの人や感染済みの人を感染させる能力が、従来株よりさらに高いことが一因だ。

つまり、新型コロナウイルスが今後も免疫の防御を突破する方法を見つけ続けると考える根拠が増えた。

世界保健機関(WHO)の伝染病専門家、オリビエ・ルポラン博士はロイターに対し「理論的な閾値(いきち)を超えると感染が止まるというのは、今回のパンデミックの経験を考えると、おそらく現実的ではない」と述べた。

ただ、免疫の獲得が何の役にも立たないというわけではない。ロイターの取材に応じた多くの専門家によると、集団免疫には至らないまでも、ワクチン接種と感染により新型コロナに対する免疫が集団として高まり、感染者あるいは再感染者の重症化が、避けられるという証拠が増えているという。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の感染症専門家のデイビッド・ヘイマン博士は「オミクロン株と今後発生する新たな変異株に対して集団としての免疫がある限り、幸い新型コロナは対処可能な疾病になるだろう」と述べた。

はしかとは異なる

今の新型コロナワクチンは、感染よりも重症化や死亡を防ぐことを主眼に設計されている。

2020年後半の臨床試験の結果、2種類のワクチンが90%以上の有効性を示したため、はしかが予防接種で抑え込めたように、新型コロナも予防接種の拡大で鎮圧できるのではないかとの期待が当初広がった。

だが、新型コロナでは2つの要因がこうした期待を後退させたと、ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院の伝染病専門家、マーク・リップシッチ氏は指摘する。

「第1の要因は、免疫、中でも重要な免疫である感染に対する免疫が、少なくとも今あるワクチンでは非常に速く低下することだ」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国GDP、第1四半期は前年比+5.4% 消費・生

ビジネス

報復関税、中国の医薬品価格押し上げか 大手各社が米

ビジネス

午前のドルは142円後半へ小幅安、日米交渉前に手控

ビジネス

中国新築住宅価格、3月は前月比横ばい 政策支援も需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中