最新記事

米空母

1円で売却された米空母キティホーク、解体に向け最後の旅路に就く

2022年1月24日(月)12時24分
青葉やまと

博物館としての保存プロジェクトが進んでいた

スクラップ工場へとすでに旅立ったキティホークだが、空母博物館として退役後の余生を送るという別の未来もあり得た。

キティホーク退役軍人協会は海軍に対し、カリフォルニア州に係留し博物館に改装する計画を提案している。候補地のロングビーチには現在、引退した元客船のクイーン・メリー号が係留され、博物館兼ホテルとして親しまれている。

退役軍人協会は同船の付近に開業することを想定し、1200名の会員から計およそ500万ドル(約5億7000万円)分の寄付の確約を取り付けていた。1セントで入札したスクラップ会社の申し出を大幅に上回る額だが、海軍は廃船業者への譲渡を決定する。博物館へのリニューアル計画を進めていた同協会にとって、1セントのオファーに出し抜かれるとは寝耳に水だったようだ。

海軍側の説明としては、歴史的に非常に意義のある退役軍艦のみを保存の対象としたい意向のようだ。また、500万ドルの寄付額では必要な改装費用の半分程度に留まることから、計画の不確実性も問題となっていた。

キティホークは、1950年代から60年代にかけて4隻(ジョン・F・ケネディ含む)が建造されたキティホーク級艦の一番艦だ。1961年に就役し、アフガニスタンやイラクなどに展開している。退役前の10年間は日本の横須賀に配備された。

2008年に日本を離れると、ハワイ経由でブレマートンへ向かい、翌2009年に同地で退役となる。同型艦のなかで最後まで現役で使用された空母であり、原子力を用いない通常動力空母としても最後の一隻であった。

ベトナム戦争時のキティホーク USS Kitty Hawk (CVA-63) 1966-67 Vietnam War Home Movies

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドル34年ぶり155円台、介入警戒感極まる 日銀の

ビジネス

エアバスに偏らず機材調達、ボーイングとの関係変わら

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中