最新記事

米政治

日本人が知らないトランプの現在の力

TRUMP'S NEGATIVE EFFECT

2022年1月18日(火)15時50分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)
ドナルド・トランプ

共和党支持者の大半はトランプの再出馬を望む(2021年7月、フロリダ) EVA MARIE UZCATEGUI/GETTY IMAGES

<トランプは今、実際どの程度の政治力を持っているのか。中間選挙はどうなるのか。不安と期待を集める前大統領の「口先介入」と2024年大統領選再出馬の公算>

自分は取り立てて分断を招くタイプではない――今年11月の米中間選挙に向けて、ミシガン州での上院議員候補を決める共和党予備選に立候補したマイク・デトマーは、ずっとそう思っていた。

ところが、ドナルド・トランプ前大統領に推薦された途端、事態は一変した。

ミシガン州第22選挙区でデトマーが党候補の座を争う相手は、必ずしもトランプに「従順」とは言えない現職のラーナ・タイス上院議員だ。

前回選挙で大差で勝利したタイスは、共和党優勢の同選挙区での再選が比較的堅いとみられていた。トランプの支持表明で、デトマー陣営の資金集めに弾みがつくまでは。

トランプの「口先介入」で、タイスは予備選により多くの資源を投じることを迫られ、共和党が手にするはずだった同選挙区の議席は危うくなるだろう。ミシガン州共和党幹部の間では、そんな懸念の声が上がる。

一方、共和党内の醜い争いによって番狂わせが起きる可能性があると、同州民主党は活気づいている。

今年、さらにはその先に共和党を待ち受ける難題はこうした状況にある。

前大統領で、次の大統領になる可能性のあるトランプは、党内で誰よりも大きな権威と影響力を持つ。トランプの支持表明は候補者の資金調達力を大きく変え、究極的には得票数も大きく左右する。

ただし、トランプの「候補者選び」の基準は、あらゆる反証もお構いなしに、大統領選で勝利を盗まれたとの自分の主張を支持するかどうか、を重視する傾向を強めている。

トランプ推薦は両刃の剣

前回大統領選の結果へのトランプの極度のこだわりと、自分を不当に扱った(と信じる)者への政治的復讐を追い求める姿勢が、共和党の歴史的勝利が予想される中間選挙の行方をひっくり返し、2年後のホワイトハウス奪回の見込みも台無しにしかねない。

共和党政治家や党職員、顧問や選対関係者の話からは、そうした懸念の広がりがうかがえる。

とはいえ、共和党関係者は盤石の支持基盤を持つ重鎮のトランプが、党の未来を確かなものにする力となることを期待している。

本人が望むなら、2024年大統領選の候補の座はトランプのものだと党員の多くが考え、世論調査によれば、共和党支持者の大半もトランプ再出馬を望む。

昨夏には、トランプの政治活動委員会(PAC)がアイオワ州で人員採用を始めた。大統領選候補指名レースが毎回、同州の党員集会で幕を開ける事実を考えれば、重要な動きだ。

トランプ自身、再選への意欲を強く示唆している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中