最新記事

中国

都市封鎖下で出血した妊婦の診療を拒否──「ゼロコロナ」に固執する当局に中国人激怒

Chinese Residents Reportedly Turned Away From Xi’an Hospitals

2022年1月6日(木)19時24分
ケイティー・ワーマス

全市民にPCR検査をするために作られた仮設の検査センター(西安、2021年12月22日) cnsphoto-REUTERS

<少数の感染者が出ただけで、北京冬季五輪の成功と習近平安泰のために移動も経済も止め、市民の命を犠牲にしてでも感染を「ゼロ」に抑えようとする当局の強引さに中国人の不満が爆発>

新型コロナウイルスの感染拡大により都市封鎖が続いている中国陝西省の都市・西安では、「病気になっても医療を受けられない」と市民が悲鳴を上げている。

SNS上に飛び交う訴えを見ると、人口約1300万人のこの都市では今、新型コロナ以外の病気や怪我で病院に行っても、直近の陰性証明がないと門前払いをくらいかねないようだ。

もっとも市民の怒りを買ったのは、元旦に妊婦が腹痛に見舞われ病院に搬送されたが、陰性証明の期限が4時間だけ過ぎていたために診療を拒否されたという訴えだ。妊婦の姪がSNSに投稿した動画(妊婦の夫が撮影)では、妊婦は病院の外でピンク色のプラスチックのスツールに座り、院内に入れてもらえるのを待っているうちに出血し始める。

医療スタッフがスツールの下の血だまりに気づいて、妊婦はようやく受け入れてもらえたが、姪の訴えによれば、手術を受けたときには既に胎児は死んでいたという。

西安に続き、河南省の人口117万人の都市・禹州でも、無症状の新型コロナの感染者が3人確認されたことを受け、都市封鎖が実施された。1月5日現在で、当局が確認した無症状の感染者は23人、症状がある患者は6人にすぎない。

西安はピークアウトの兆し

それでも市全域で交通はストップし、道路を走るのは救急車や消防車など緊急車両ばかり。学校は一斉休校になり、宅配サービスも生活必需品に限定されている。

河南省の他の都市でも、確認された感染者はごく少数にすぎないにもかかわらず、集団検査の実施、公共施設の閉鎖、さらに市境を越える移動はもとより、市内でも移動を制限または禁止するなどの措置が取られている。

昨年12月23日から2週間厳しい都市封鎖が実施されてきた西安では、新型コロナの感染者が大幅に減ったと、中国当局が1月5日に発表した。

中国の国家衛生健康委員会の発表によると、この日西安の新規感染者数は35人で、前日の95人の半数以下にとどまった。

西安は兵馬俑遺跡で有名な観光都市で工業も盛んだ。

新規感染者は全員これまでに感染者が出ていた地域の住民で、既に隔離されていた人たちであり、それ以外の地域では新たな感染が報告されていないことから、市中感染はほぼ完全に抑えられたと見ていいと、衛生当局は述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中