最新記事

米事件

恋人を自殺に追い込んだ全米2例目の「テキストメッセージ殺人」

Inyoung You, Who Urged Boyfriend to Kill Himself in Texts, Pleads Guilty, Avoids Prison

2022年1月6日(木)16時44分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
インヨン・ユウ被告

自殺の直前にはボーイフレンドを必死で止めたインヨン・ユウ被告(2019年) David L Ryan-REUTERS

<ガールフレンドから2カ月で4.7万件もの暴言と虐待のメッセージを浴びせられた男子学生は卒業を前に飛び降りた>

韓国生まれで米国籍を持つインヨン・ユウは2021年12月23日、米マサチューセッツ州サフォーク郡上級裁判所で開かれた裁判で、自らの過失致死を認めた。同じボストン・カレッジに通っていたボーイフレンドのアレクサンダー・ウーテュラに自殺を促す大量のテキストメッセージを送り、自殺に追い込んだのだ。ウーテュラは2019年5月20日に自ら命を絶った。

ニュージャージー州シダー・グローブ出身のウーテュラが自殺したこの事件について、ユウは当初無罪を主張していた。だが司法取引の結果、ユウは懲役2年半、執行猶予10年の判決を受けた。執行猶予中の条件を順守すれば、ユウが収監されることはない。ユウは、メンタルヘルスの治療を受けるほか、社会奉仕活動を全うすることが義務づけられる。

ユウがウーテュラに送ったテキストメッセージは、自殺前の2カ月で4万7000件以上にのぼる。その多くは、数千回もウーテュラを侮辱し、「死ね」と自殺をそそのかす内容だった。自殺しなければ彼女が自分を傷つけると脅迫するメッセージも含まれており、ユウがこうしてテキストでウーテュラの心を支配しようとしていたと、ボストン・ヘラルド紙は報じている。

ユウは法廷で、ウーテュラにこれらのメッセージを送ったことを認めた。

「言葉は重要」

司法取引の一環として、ユウは今後10年間、メディアの取材を受けることをいっさい禁止されている。つまり、ドキュメンタリーや記者会見、メディアイベントなどで自らの言い分を話し、この事件から利益を得ることはできない。

捜査当局は、ユウとアレクサンダーの18か月間に及んだ交際について、「健全に機能していない、錯乱した関係」だったと述べた。12月23日の審問後に発表されたレイチェル・ローリンズ検察官の声明によれば、ユウは「ウーテュラに対して殺気立った態度をとり、ときには執拗に暴言を吐いたり、身体的かつ心理的な虐待を働いたりしていた」とされている。

ユウのそうした行為は、ウーテュラが自殺した日が近づくにつれて激しさを増していったという。

「言葉は重要である」。ローリンズは声明でそう述べている。「人を傷つける言葉遣い、嘲笑、暴言は、相手にきわめて大きな打撃を与えることがある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が

ビジネス

カナダ、63億加ドルの物価高対策発表 25年総選挙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中