最新記事

北朝鮮

「すぐ崩壊する」の観測を覆した金正恩の10周年、侮れない実力と「らしさ」

KIM JONG UN’S DECADE

2022年1月27日(木)17時24分
レイチェル・ミニョン・リー(米分析サイト「38ノース」フェロー)

だが留意すべきは、北朝鮮の国営メディアがこれまでと変わらず、経済は政府の「統一された指揮下」にあり、一方で党の役割は政府に指示を出すことだという線引きを維持している点だ。国営メディアの発信するメッセージを検証する限り、政府の指揮する経済改革は今も継続されていると考えられる。

また統制強化を示唆する文言も、それ自体を改革の否定とみてはならない。今のところ、あの国は党と政府の管理下で改革を進めるとの方針を維持しているようにみえる。

金正恩自身は、今も彼なりの改革を進める覚悟らしい。だが改革の成否はアメリカとの関係改善に懸かっている。それなくして国際的な孤立の解消も国内経済の発展もあり得ないことを、北朝鮮は理解している。

しかしハノイでの苦い経験も忘れていない。だから具体的な成果を得られるという確信を持てない限り、次の首脳会談には応じない。

北朝鮮はこのところ、やたら「共産主義」だの「思想第一」だのと言い立てている。現実が苦しいからこそ、保守的な言辞で締め付けを図るしかないのだろう。しかし外交面でしかるべき動きがあり、北朝鮮がそれをチャンスと見なせば、北朝鮮も強権支配の手綱(悪名高い「反動思想文化排撃法」を含む)を緩めるかもしれない。

なにしろ創造性と技術革新は、今も変わらぬ金正恩のキーワードだ。しかも彼は、かつてディズニーの着ぐるみに拍手を送った男。切に願う。金正恩よ、そういう「らしさ」を今後も失わないでほしい。

©2022The Diplomat

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、財務長官に投資家ベッセント氏指名 減税

ワールド

トランプ氏、CDC長官に医師のデーブ・ウェルドン元

ワールド

トランプ次期大統領、予算局長にボート氏 プロジェク

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中