アメリカからの武器購入を中断したUAEに中国の影
UAE Halts Discussion on $23B Purchase of Planes, Drones from U.S.
テスト飛行中のF35ライトニング2(2012年8月8日) REUTERS/Andy Wolfe/Lockheed Martin
<対テロ戦争の協力者だったUAEだが、今月初めには、アブダビ港で建設が進められていた中国の施設が軍事基地にあたるというアメリカの抗議で建設中止になった経緯も>
アラブ首長国連邦(UAE)は12月15日、アメリカから武器を購入する計画を凍結すると発表した。総額230億ドルにのぼる取引の対象には、次世代戦闘機「F35ライトニング2」、高性能武装ドローン、空対空および空対地ミサイルが含まれていた。
在ワシントンUAE大使館は、米国防総省との間で予定されているそのほかの問題についての協議は予定どおり進めていくつもりだが、武器売却については「協議を中断」したいと表明した。UAEの複数の当局者はその理由として、戦闘機使用の場所や方法について、アメリカ側が制限を設けてきたことを挙げ、UAE側としてはこれが主権の侵害にあたると考えていると述べた。
米国防総省のジョン・カービー報道官はこれらの要件について、「UAEだけに求めている条件ではなく、交渉の余地はない」と述べた。
この問題に詳しい人物(匿名)がAP通信に語ったところによれば、UAEがアメリカ側に協議中断の意向を伝えた手紙が下級官僚によって書かれたものであったことから、アメリカ側は、協議の中断はUAE側の交渉戦術だと考えているという。
トランプが約束していた武器売却
米国務省とUAE大使館はいずれも、協議再開の余地はあるとしている。同大使館は声明の中で、「アメリカはUAEにとって今後も、高度防衛装備品の優先供給国であり、F35に関する協議を将来的に再開する可能性はある」と述べた。
UAEにF35戦闘機50機を売却する計画は、ドナルド・トランプ前米政権の終盤に浮上していた。UAEがイスラエルとの国交正常化に合意したことに基づいて、合意されたものだ。その後発足したジョー・バイデン米政権は、この売却計画について、見直しのための一時凍結を決定。UAEとサウジアラビアがイエメンにおける代理戦争によって世界最悪の人道危機を引き起こしていることへの批判が一因だった。取引の対象には、高性能武装ドローン18機や、空対空および空対地ミサイルも含まれていた。
米国務省は声明の中で、バイデン政権は「今後も売却計画に注力していく考えだ。その一方で、武器が引き渡される前や途中の段階、および引き渡し後のUAE側の責務や行動について、明確な相互理解が得られるように、引き続き協議を続けていく」と説明。カービーは、「アメリカとUAEのパートナーシップは、1件の武器売却計画よりもずっと戦略的かつ複雑なものだ」と述べた。
協議中断について、最初に報じたのはウォール・ストリート・ジャーナル紙だった。