最新記事
中国

アリババが、婦女暴行で上司を告発した社員を解雇

Alibaba Fires Woman Whose Rape Accusation Gripped China for 'Spreading Misinformation'

2021年12月14日(火)19時02分
ナタリー・コラロッシ
アリババのロゴ(北京)

アリババのロゴ(北京) Tingshu Wang-REUTERS

<最初は「性的不正行為に対するゼロトレランス方針」を理由に告発された男性社員を解雇したアリババが、一転、被害を告発した女性を解雇>

中国の大手テクノロジー大手アリババが、「2021年の出張中に上司にレイプされた」と主張した女性従業員を解雇し、この女性が偽情報を広めたと非難した。女性の弁護士が12日に発表した。

複数のメディア報道でチョウという姓で呼ばれているこの女性は、2021年7月に当時の上司ワン・チェンウェから性的暴行を受けたと告発した後、11月25日に解雇された。この出来事は中国で話題となり、中国の#MeToo(ミートゥー)運動でも大きく取り上げられ、暴行被害を訴えた中国の女性がしばしば直面する困難を浮き彫りにした。

12日に公表された解雇通知の内容によれば、アリババはチョウを解雇した理由について、チョウが偽情報を流し、「会社は状況を把握していたが何もしなかった」と主張したことを挙げている、とウォールストリート・ジャーナルは報じている。

チョウの主張によれば、彼女は出張中、意識を失うほど酒を飲まされ、ホテルの部屋で目を覚ましたとき、ワンと、名指しされていない顧客に暴行されていたという。ニューヨーク・タイムズによれば、チョウはこの一件を会社上層部に報告したが、誰も動かなかったため、8月、公にすることを決断したという。


加害者と被害者が逆転?

アリババはその直後、「性的不正行為に対するゼロトレランス方針」を理由に、ワンをはじめとする数人の従業員を解雇したと発表した。ところが今は、アリババはチョウの主張に異議を唱えている。ニューヨーク・タイムズによれば、解雇通知には、「『上司にレイプされ、会社は知っていたが対処しなかった』などの偽情報を広めた」と書かれている。

解雇通知は、こう続いている。「8月以降、この一件はいくつかの紆余曲折を経た」「会社と、あなた自身を含む当事者が受けた損害は計り知れない」

この性的暴行事件には9月、さらなる衝撃が続いた。ワンの行動は犯罪にあたらないという理由で、中国の捜査当局が不起訴を決定したのだ。

ウォールストリート・ジャーナルによれば、アリババは、チョウに弁護士料やカウンセリング料の支払いと退職条件の交渉を試みたが、チョウは断ったという。チョウは報道陣の取材に対し、自身の体験を公にして以降、鬱状態や、相次ぐ嫌がらせに直面してきたと語っている。

ウォールストリート・ジャーナルは、チョウの言葉を紹介している。「いつの日か、この社会が性的暴行事件に直面したとき、被害者を侮辱したり、暴言を吐いたりする人がいなくなり、もっと気遣いや関心が増えることを願っている」
(翻訳:ガリレオ)

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中