非正規金融ネットワーク「ハワラ」、欧州密航あっせんで利用急拡大
ジュネーブに拠点を置く民間調査団体、グローバル・イニシアチブ・アゲンスト・トランスナショナル・オーガナイズド・クライムのチューズデー・レイタノ副所長は、影の銀行(シャドーバンキング)は何であれ、当局が金融取引を通じて密航あっせん者の行動を追跡することを不可能にすると指摘する。
以前なら、密航組織は通常、フランス国内で現金のやり取りをしていた。レイタノ氏は「金融面の捜査は(密航に関する)捜査で柱の1つだが、ハワラはその柱を奪い取っている」と嘆いた。
欧州刑事警察機構(ユーロポール)の広報担当者は、ハワラ自体は非合法でないものの、犯罪集団がマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用しかねないと懸念を示した。欧州司法機構(ユーロジャスト)で密航や密輸の取り締まりに従事しているフィリッポ・スピエツィア氏は、ハワラが英仏海峡などの密航の代金決済手段として使われる事例が非常に多いと述べた。
レイタノ氏によると、密航の金銭取引の仲介者を訴追できるケースは非常にまれで、司法当局は訴追にこぎつけるために、資金のやり取りが違法行為に利用されたと仲介人が知っていたことを立証しなければならない。
唯一の選択肢
英国放送協会(BBC)の集計に基づくと、今年これまでにフランスから海を渡って英国に入ってきた移民は、前年の約3倍に膨れ上がっている。英内務省はこの数字についてコメントを拒否したが、英政府の発表では今年に入って2万人余りの入国を阻止したという。
一部の英国移民希望者は、最近になってようやく密航代金の決済手段をハワラに切り替えたもようだ。フセインさんと同じ収容施設で暮らし、やはりイラク・クルド人自治区出身のダワン・マフムードさん(30)は3カ月前、フランスに初めてやってきた際に、密航あっせん者に2000ドル余りをだまし取られた。マフムードさんはロイターに、当時前金で支払ったと明かした。それ以降、二度と同じ目にあわないよう、故郷の仲介人を利用し、英国に無事着いた後で家族に支払いを指示する形にしているという。
ハワラを通じた決済は、ある場所にいる仲介人がお金を預かった上で、違う都市や国にいる別の仲介人に連絡してこれまでに受け取った金額を報告することで機能する。実際には現金が国境間を行き交わないケースが多く、一種の信用制度に基づいている。仲介人はサービスの手数料を請求するが、通常の国際送金などより費用が安いとみなされている。
フセインさんの場合、故郷を離れたのは政治腐敗と就職の難しさが理由だ。ハワラは現地で送金方法として普通に利用されていたので、移民のための当然の選択肢と受け止めた。それでも、密航あっせん者にこれほど多額の支払いをしなければならないことには不快感を隠さない。「彼らは濡れ手にアワで多くのお金を持っていく。だが、われわれほぼ全員にとって、ほかに道はない」と語った。
(Layli Foroudi記者)
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