中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官
MI6 Warns China 'Miscalculation,' 'Overconfidence' Could Lead to War With U.K., Allies
秘密主義で知られるMI6の歴代トップのなかで初めてツイッターのアカウントを持ったムーア長官 The Telegraph-YouTube
<007シリーズで有名な英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした。民間からの技術協力がなければ中国に勝てないと判断したからだ>
イギリスの対外諜報機関の責任者が情報活動で最も重視している相手国として中国を名指しし、中国政府の「誤算」は戦争につながる可能性があると警告した。
2020年10月にイギリスの諜報機関MI6(正式名称「秘密情報部」)の長官に就任したリチャード・ムーアは11月30日に初めて公の場で演説を行った。そして、イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った。
AP通信の報道によれば、ムーアは中国を「われわれとは異なる価値観を持つ独裁的国家」と呼んだ。そして、中国政府はイギリスとその同盟国に対して「大規模なスパイ活動」を仕掛け、「一般世論と政治的意思決定を歪めようと」試み、世界中に「独裁的支配の網」をはりめぐらすためのテクノロジーを輸出していると語った。
「中国政府は西側の弱点に関する自作のプロパガンダをみずから信じており、米政府の決意を過小評価している」と、ムーアは付け加えた。「自信過剰によって中国が判断ミスをするリスクは存在する」
ムーアはまた、中国の現政権は「大胆で決定的な行動」を後押ししていると述べ、その最たる証拠として1949年に中国本土から分裂した台湾を独立国として認めることを拒んでいることを挙げた。
「中国が軍事力を増強していること、そして中国共産党が、必要であれば力づくでも台湾を統一したがっていることも、世界の平和と安定を脅かす深刻な課題を提起している」と、ムーアは述べた。
ウクライナ侵略も防ぐ
AP通信が報じたより詳細な報道は以下のとおり。
イギリスは「ロシアからの深刻な脅威にも直面している」と、ムーアは語った。さらに、ロシア政府が2018年にイギリスで起きた元スパイのセルゲイ・スクリパリの毒殺未遂など、暗殺事件の黒幕となり、サイバー攻撃を仕掛け、他国の民主的プロセスに干渉していると指摘した。
「わが国と同盟国、そしてパートナー国は、国際ルールに基づくシステムに違反するロシアの活動に立ち向かい、阻止しなければならない」とMI6長官は述べた。
「欧州およびその周辺のどの国も、ロシアの態度が改善されることを期待してバランスの悪い譲歩をする誘惑に負けてはいけない」と彼は言い、ロシアが2014年にウクライナからクリミアを併合し、最近もウクライナとの国境付近で軍を増強していることを指摘した。
この発言は、ウクライナにおけるさらなる侵略を防ぐためにロシア政府を牽制しようとするイギリスと北大西洋条約機構(NATO)の高官が発した最新の警告を反映している。
イランもまた大きな脅威を与える存在であり、「国家内の国家」とよばれるイスラム教過激派組織ヒズボラを利用して近隣諸国の政治的混乱をあおっている、とムーアは語った。