2021年JC・JK流行語大賞を総括する──「第4次韓流ブーム」と「推し活」という2つのキーワード
このような消費文化をもつ若者にとって、いつまで自分がそのコンテンツが好きかわからない(自信がない)のに一つのコンテンツに対して金額を集中して支出する事自体がリスクとなる。そのため、極力低コスト且つ、自身の推しに対する熱心度を表現できるトレカデコは、気軽に推しを応援できるツールなのである。筆者自身、若者のオタクという言葉の使い方や解釈に最初は戸惑ったが、当初の「オタク」や「推し」といった言葉の意味自体に引っ張られるのではなく、彼ら彼女たちは単純に趣味や余暇活動のことをオタクやオタ活と言っていると解釈すれば、従来のオタクという語彙とは全く性質の違うものであると納得できるだろう。
4──「ぴえん」はもうイタい
さて、本レポートでは「韓国」と「推し活」という2つのキーワードから2021年JC・JK流行語大賞を総括し、消費文化論の視点から考察してきた。最後に本家であるユーキャン2021年新語・流行語大賞に触れる。年間大賞は今季MLBのMVPを受賞し、打者としてホームラン46本、投手として9勝を挙げたロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手に関するワード「リアル二刀流/ショータイム」だった18(表5)。トップ10にランキングしたものやノミネートされた言葉をみると「ゴン攻め/ビッタビタ」、「チキータ」といった東京オリンピックに関する言葉や「副反応」、「黙食」といった新型コロナウイルスに関する言葉が散見された。
2021年JC・JK流行語大賞のランキングと比較すると「推し活」と『イカゲーム』が双方にノミネート19されたこととなる。全ノミネート29ワードの内2つしか双方にノミネートされていなかったが、これは言うまでもなく若者の流行が反映されていなかったわけではなく、2021年JC・JK流行語大賞にランクインした流行語はあくまでも若者同士という特定の層の中で流行していただけで、社会全体を巻き込んだトレンドではなかったということである。
本レポートを見るまで、見たことも聞いたこともない言葉だらけだと思った読者もいたのではないだろうか。若者の流行はあくまでも若者内の出来事であり、そこから逸脱した筆者を含む大人たちとそれらのワードやブームとの接点は少なく、それらを理解すること自体が不可能なのである。元も子もない話ではあるが、筆者がこのようなレポートを出しても、明日には今回紹介したワードの旬は既に過ぎているかもしれない。昨年のこの時期に筆者は「ぴえん」に関するレポート20を発表し、若者文化を少し理解できたとお褒めの言葉を頂いたが、現実は残酷でやっと大人たちが「ぴえん」を理解し始めたにも拘らず、株式会社リクルートが運営する「スタディサプリ進路」が全国高校生男女500人を対象とした「大人がまだ使っていたらイタい流行語ランキング2021」21の1位は「ぴえん」であった。これがほんとのぴえんである。
また、2021年JC・JK流行語大賞のコトバ部門2位の「let it be」についても、我々とは違う文脈で使われている。本来の意味は「なんとかなるさ」、「あるがままに」、「なすがままに」と訳されるが、若者の間で現在使われている「let it be」は以前流行した「バイブス」や「マジ卍」のように言葉遊びや響きを楽しんで使われており、彼女たちに「ビートルズ知ってるの?」や「その使い方間違っているよ」等と指摘することは無粋である。我々大人は無理してついていくのではなく「我々が知らない所でこういうモノが流行っているんだな」と自身の知らないところで生み出された文化に感心するだけで十分なのだ。
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18 https://www.jiyu.co.jp/singo/
19 上半期を含めると「うっせぇわ(JC・JK版では歌手のAdo)」と「ウマ娘」がノミネートされた
20 「ぴえん」とは何だったのか基礎研レポート2020/12/04
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=66265?site=nli
21 JK/DK 500人が選ぶ「今年中に流行が終わると思う言葉ランキング2021」1位「はにゃ?」 「大人がまだ使っていたらイタい流行語ランキング2021」1位は「ぴえん」2021/11/17
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001291.000011414.html