最新記事

高収入世帯

パワーカップル世帯の動向──コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

2021年12月6日(月)12時03分
久我尚子(ニッセイ基礎研究所)

3──パワーカップル世帯の動向~コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

1|共働き夫婦の年収分布~高収入の妻ほど高収入の夫、ただし扶養控除枠を意識する妻も

次に、パワーカップル世帯を含む共働き世帯の状況を確認する。

総務省「令和2年労働力調査」によると、夫婦共に就業者の世帯(以下、共働き世帯)は1,621万世帯であり、総世帯の約3割を占める。

この共働き世帯について、妻の年収階級別に夫の年収階級の分布を見ると、妻の年収が高いほど夫も高年収の割合が高まる傾向がある(図表5)。年収1,000万円以上の妻の80.0%が夫も年収1,000万円以上であり、以前より上昇している(2016年で75.0%、+5.0%pt)。一方で、妻の年収が200万円未満を除くと、妻の年収が低いほど夫も比較的低年収の割合が高い傾向がある。つまり、高年収同士、あるいは低年収同士が夫婦であることで、夫婦(世帯)間の経済格差2の存在が窺える。

妻の年収200万円未満(収入無しを除く)では、逆に夫の年収は低年収の割合が低下し、年収500万円以上の割合が高まる。夫の年収500万円以上の割合は、妻の年収200~300万円未満では35.4%だが、妻の年収50万円未満では40.0%、50~100万円未満では46.4%、100~150万円未満では41.6%と4割を超える(図表略、図表5はこれらを合算した値)。この背景には夫が一定程度の年収を得ているため、自身の収入を増やすよりも夫の扶養控除枠を意識して働く妻が増えることなどがあげられる。

nissei20211202144103.jpg

2|パワーカップル世帯数の推移~コロナ禍でも引き続き増加、2020年で34万世帯、共働き世帯の2.1%

夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に注目すると、2020年では34万世帯で総世帯の0.62%3、共働き世帯の2.1%を占める(図表6)。

なお、冒頭で述べた通り、パワーカップルの定義は様々である。参考までに、例えば夫婦の合計年収が2千万円前後・以上の世帯4について見ると14~29万世帯で総世帯の0.25~0.52%、共働き世帯の0.86~1.8%を占める。先に見た通り、年間所得2千万円以上の世帯は全体の1.3%であるため、このうち共働き世帯は3割前後を占めると見られる。また、夫婦の合計年収1500万円前後・以上まで広げると、46~156万世帯で総世帯の0.83~2.8%、共働き世帯の2.8~9.6%を占める。

nissei20211202144104.jpg

────────────────
3 ここでの総世帯は先の厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」による5,179万世帯ではなく、総務省「2020年労働力調査」における二人以上世帯(3,544万世帯)と単身世帯(1,980万世帯)を合わせた5,524万世帯を用いている。

4 図表5・6にて、妻の年収1,500万円以上で夫の年収500万円以上など合計が2,000万円以上に加えて、妻の年収1,000~1,500万円未満で夫の年収500~1,000万円及びその逆のパターンを加えたもの。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中