パワーカップル世帯の動向──コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労
視点を夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に戻すと、パワーカップル世帯数は近年、増加傾向にある(図表7)。なお、2019年から2020年にかけての大幅な伸びは2021年以降の変化を考慮して判断すべきと考える。なぜならば、同調査の就業者夫婦の年収階級別世帯数の公表値は1万世帯単位であり、現在のところ、単位に対してパワーカップル世帯数が少ないためだ。いずれにせよ、新型コロナ禍の2020年においても増加傾向が続いていることは注目に値するだろう。
また、パワーカップル世帯の内訳を見ると、引き続き「夫婦と子」から成る核家族世帯が最も多く、2020年で約6割を占める。次いで「夫婦のみ」世帯で約3割を占める。
3|夫の収入別に見た妻の就労状況~夫の年収が1500万円以上でも妻の約6割は就労
ところで、2017年の分析では、依然として、夫の収入が高いほど妻の就業率が下がるという「ダグラス・有沢の法則」が成立していた。
2020年のデータで改めて見ると、やはり夫の年収が400万円以上では夫の年収が高いほど妻の労働力率は低下し、依然として「ダグラス・有沢の法則」は成立している(図表8)。
一方で夫の年収によらず妻の労働力率は全体的に上昇傾向にあり、夫が高収入の世帯でも多くの妻が働くようになっている。例えば、夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は48.8%から61.5%(+12.7%pt)へ、世帯数は20万世帯から32万世帯(+12万世帯)へと増えている。
また、夫が高年収の世帯ではフルタイムで働く妻(週35時間以上就業の雇用者)もやや増えている。夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は14.6%から17.3%(+2.7%pt)へ、世帯数は6万世帯から9万世帯(+3万世帯)へと増えている。なお、夫の年収が700万円以上の世帯に広げて見ると、妻の労働力率は17.4%から21.2%(+4.8%pt)へ、世帯数は78万世帯から114万世帯(+36万世帯)へと増えており、このうち約3割がパワーカップルである。
4――おわりに~遠回りに見えるが就労環境の整備こそ有効な消費喚起策
パワーカップルは現在のところ、共働き世帯の約2%に過ぎないがコロナ禍でも増加傾向にある。背景には、近年、仕事と家庭の両立環境の整備が進んだことで、出産後も正社員として働き続け、収入を大幅に減らさずにキャリアを積む女性が増え、若い世代でパワーカップルが増えていることがあげられる。