最新記事

中国

女子テニス選手と張高麗元副総理との真相──習近平にとって深刻な理由

2021年11月23日(火)15時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国の著名な女子テニス選手・彭帥さん Edgar Su-REUTERS

張高麗は習近平が固執して選んだチャイナ・セブンの一人だ。2012年春、私は天津で張高麗の芳しくない「秘密」を耳にしていた。バッハ会長にまで応援を頼んで火消しに走る習近平の窮状と事件の真相を明らかにしたい。

女子テニス選手がネットで告白

11月2日、中国の著名な女子テニス選手である彭帥(ほう・すい)さんが微博(ウェイボー)に、張高麗元国務院副総理(副首相)との正常ではない男女関係に関して告白した。これは「告発」というよりも、苦しみに満ちた「告白」だ。

以下に示すのは、その告白文の写しである。

endo20211123143901.jpg
中国女子テニス選手・彭帥さんの微博における告白文

告白文はあまりに赤裸々に描いているので、その全訳をご紹介するのを控え、説明を加えながらポイントだけを一部ピックアップしてみたい。

●張高麗が天津市の書記をしていたころ、張高麗は彭帥に男女関係を求めた(2018年から7年前と書いてあるので、2011年と推測される)。彭帥はその要求に応じてしまった自分を責めまくり、「私はもの凄く悪い女の子だ」と断じている。何のために自分はこの世に生まれてきたのか(生きている価値さえない)と自責の念に駆られている。

●張高麗は不正常な関係を持った翌年(2012年11月)に中共中央政治局常務委員(チャイナ・セブン)になり、それ以降、2018年まで彭帥に連絡をしてこなかった。

●ところが(2017年10月の第19回党大会で政治局常務委員から外れ)2018年3月に国務院副総理の座を去ると、張高麗は又もや彭帥に連絡してきた。一緒にテニスをしたいという張高麗の伝言を、天津テニスセンターの劉先生が彭帥に伝えた。

●その日、テニスをして終わると、張高麗は、夫人とともに彼の家に彭帥を誘い、彼の部屋に案内して、またもや不正常な関係を求めてきた。夫人は部屋の外で見張りをしていた。いったいどこの世界に、妻が夫の不倫の見張り役をするなどということがあろうか。その日は恐ろしくてひたすら泣いた。

●張高麗夫人は、張高麗のいないところでは彭帥に嫌がらせをし、彭帥を侮辱した。

●「あなた(張高麗)は私(彭帥)が何か証拠を残しているだろうことを、とっても怖がっていますね。しかし私は録音もしていなければ、録画もしていない。いかなる力もない私だけど、でも私はあなたとの事実を言うことができるのです」。(列挙はここまで)

告白文は、張高麗と彭帥は話し合うことになっていたのに、突然張高麗が断ったことに対する恨みを表し、2012年に突然彭帥のもとを去っていった張高麗に喩(たと)えて、張高麗を責めている。しかも二人の関係は決して彭帥が求めたものではなく、張高麗の方から求めてきたもので、そうでなければ自分のような身分の者が天津市の書記に直接連絡をすることなど出来るはずはない、と説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中