渋谷に負けぬほどの迷宮ぶり 初めての人を確実に混乱させる大阪駅=梅田駅のややこしさ
新大阪駅から直通で関西空港に向かう路線が10年後完成する
そして、この地下新駅から分岐し、福島駅付近からなにわ筋の下を通る地下線「なにわ筋線」も計画されている。途中でさらに分岐して、JR難波駅へと向かう路線と、南海新今宮駅へと向かう路線が2031年に完成する予定だ。大阪府や大阪市、JR西日本などが出資する第三セクターの関西高速鉄道が建設し、JRと南海が運行する形となる。
JRは京都・新大阪駅から地下新駅を経由し、JR難波駅・天王寺駅を経て関西空港方面へ向かう特急列車を走らせることができる。
西九条駅から大阪環状線の西側区間を経由して天王寺駅を回るルートより短絡化できるうえ、中之島や難波と新大阪駅が直結し、新幹線の接続利便性が大幅に向上するというメリットもある。「はるか」は京都・新大阪・梅田・難波・天王寺という、関西の主要なターミナル駅を網羅する空港特急となる。
これは、難波から関西空港へ特急「ラピート」を運行している南海にとっては脅威だ。そこで、南海もなにわ筋線への乗り入れを熱望した。できれば新大阪駅、最低でも梅田の地下新駅までは乗り入れたいが、競合するJRはさせたくない。
綱引きの結果、2017年に協議がまとまり、南海は地下新駅まで乗り入れる代わりに、JRに使用料を支払うこととなった。
南海に続き阪急も乗り入れして......
現状で固まっている計画はここまでだが、さらに阪急もこの地下新駅への乗り入れを希望し始めた。南海とは逆に、北側から地下新駅へ乗り入れようという計画で、地下新駅と阪急十三駅を結ぶ新線を作り、さらに十三駅と新大阪駅を結ぶ新線を作ろうというものだ。
だが、こちらは先行きが不透明だ。JRと南海は線路の軌間が1067mmの狭軌で同一だが、阪急は1435mmの標準軌だ。つまり、既存の列車を乗り入れることはできない。地下新駅へ阪急が乗り入れるには、新大阪~十三~地下新駅を狭軌で新設せざるを得ない。
阪急にとって新線を建設するメリットは、南海と相互直通運転を行うことで、難波・関西空港・和歌山方面への乗換が、阪急神戸線・京都線・宝塚線が集結する十三駅で行えること、新大阪駅と関西空港が直結すれば(収入を得られるのは新大阪~地下新駅間という一部区間のみであるものの)、一定の需要が見込めそうなことだ。これは新大阪駅までの直通運転を行いたい南海にとっても大きなメリットとなる。
より巨大なターミナル駅に進化する
こうなると地下新駅の行き先も、複雑なことになりそうだ。北行きは「はるか」が現状通りの運行となれば滋賀県の野洲駅まで。南行きは関西空港駅のほか、「くろしお」が和歌山県の新宮駅まで到達する。
JRは難波駅から天王寺駅を経由して、関西本線経由で奈良方面の列車を走らせることもできるし、南海も高野線や和歌山方面の列車を直通させる可能性もあるだろう。梅田という大ターミナルがさらに巨大化するのは、どうやら避けられそうにない。
渡瀬基樹(わたせ・もとき)
ライター
1976年生まれ、静岡県出身。明治大卒。ゴルフ雑誌、自動車雑誌などの編集を経て、現在はフリーの編集者・ライターとして、高速道路、航空機、鉄道など交通関係の記事制作・編集に携わる。編著に『全国サービスエリアをとことん楽しむ!』(宝島社)など。