杉良太郎はなぜ152人を里子にしたのか? 生涯をかけた信念を語る
その活動資金のほぼ全額を、杉は自腹で賄ってきた。「海外で多くの公演をやってきたが、1回も利益を目的とする興行をしたことはない。全部チャリティーだった」と言う。そんな杉をアメリカの「チャリティー王」ボブ・ホープは「あなたは日本のチャリティー王だ」と称賛した。
数十億円という金額は、決して道楽で出せる金額ではない。「芸能人は金持ちなんだと思われることもあった」が、実際には資金を捻出するために多くの資産を抵当に入れて銀行から融資を受け、「自分の体を担保にして1億円貸してほしい」と直談判しに行ったこともある。
それでも「自分に力があれば、もっと助けられたと感じる」と言う。映画『シンドラーのリスト』で、多くの人命を救ったシンドラーは最後に「もっと救えた」「もっと金があれば」と語る。「その気持ちは本当によく分かる」
思いと心を乗せた援助を
どうして、そこまで慈善活動を続けるのか。「みんなに言われる。裏があるんだろうと思われる」と話す杉だが、自分でも理由は分からないという。「まあ、そういう人間もいるんですよ」
そもそも、相手国から来てほしいと言われたこともない。「全部押し掛け。自分で『これはやらなきゃいけない』と考え、相手の国に問い合わせて費用は自分で出すと言うと『それなら来てください』と言われて行っている」
ただ、「自分の目で孤児院や盲学校の状況を見ると『俺が援助する』となる」という彼の言葉からは、目の前で困っている人や苦しんでいる人を放っておけないという愛情が感じられる。
杉自身、「愛で、全ての問題は解決できると思う」と語る。だから支援にも、愛情や優しさが必要だとする。「ぽんとお金を寄付するのもありがたいことだが、私は後々まで見届け、人の思いと心を乗せた援助をすることを心掛けている」
また何十年も芸能界のトップに居続けたからこその思いもあるようだ。「神様がひとつだけ願いをかなえてくれるなら、『人の心の真実を教えてください』と願う。(彼らの)本当の気持ちが知りたい」と、杉は言う。「施設の人たちには虚栄心も忖度もない。ストレートに反応してくれる。そこに真実の涙や笑顔がある。それはお金を出して買えるものではない」
ベトナムにいる152人の里子とは頻繁に会えるわけではない。それでも、「いつも思いを寄せているし、心配している。それが愛情だ」。
Ryotaro Sugi
杉 良太郎
●歌手・俳優
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