日本の新しい外相には期待がもてる
For Once, Japan’s Foreign Minister Is Actually Qualified
二つ目は、もっと実質的な問題だ。安倍と麻生は、林が中国に対して弱腰だと考えている。中国がアジアの大国としての立場、少なくともアメリカと対等な立場が自分たちの「正当な立場」だと主張するなか、日本の政治家たちの間では中国への対抗意識が高まっている。中国の当局者が好戦的な発言を繰り返し、アジアの広い海域で領有権を主張し、経済力を使って敵と見なした相手を罰する姿勢を見せていることで、反中ムードが高まっているのだ。今や半導体チップの生産で経済的影響力を確立している台湾を、声高に支持する声が増えていることも、そのあらわれだ。
だが林が中国に対して弱腰な姿勢を取る可能性は低い、と指摘する声もある。「林は岸田よりも強い信念を持つリベラル派だが、一方できわめてアメリカ寄りでもある。彼が中国について、アメリカの政策と真っ向からぶつかるような政策を取るとは思わない」と、上智大学の中野晃一教授(政治学)は言う。
この問題については、林自身も直接言及している。11月11日に行った記者会見の中で林は、超党派の国会議員でつくる日中友好議員連盟の会長を辞任すると説明。外相としての職務を遂行する上で「無用な誤解を避けるため」とその理由を説明した。彼はまた、中国の行動に関する日本政府としての懸念を改めて表明。「国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的な価値や国際秩序に対する挑戦が、厳しさを増している」と述べた。
安倍政権との違いをアピールか
林の外相起用に中国政府は安堵しているかもしれないが、岸田は日本政府として、中国の人権問題に対する新たな強硬路線も示唆した。岸田は今週、中谷元・元防衛相を国際人権問題担当補佐官に任命すると発表。中国によるウイグル人をはじめとする民族的少数派や、香港の民主活動家たちの扱いに重点を置いていく姿勢を示した。
中谷は、日本が他国に対して人権侵害を理由に制裁を科すことを可能にする、政策や法案の立案・作成を行う党内機関の一員でもある。日本は中国の人権問題について、これまで協議は行ってきたものの、中国の当局者を対象とした制裁や新疆ウイグル自治区からの輸入禁止といった、アメリカの各種制裁に匹敵するような、具体的な行動は一切起こしていない。
一部のアナリストは、岸田が新たな組閣で目指したのは、2020年に歴代最長の在籍日数を記録した後に辞任したタカ派の安倍政権とは、微妙に異なる方針を示すことだったと指摘する。「新たな閣僚ポストは、日本政府が全体として対中政策ではアメリカと同調していることを示しているが、中谷の起用は林の外相起用と同様に、岸田が安倍の『伝達係』にはなりたくないと考えていることや、対中政策において彼が安倍よりも強硬な路線を取る姿勢を示している」と、上智大学の中野は指摘する。