中国の「核軍拡」は予想を大きく上回るペースで進行、歯止めの利かない領域に
The Pentagon Wants to Talk
核軍縮交渉の遠い道のり
これまで中国とアメリカは核軍縮の取り決めをしたことがなく、なんとか中国側と交渉したい米政府関係者は頭を抱えている。
だが、中国が積極的に投資しているのは核戦力だけではない。米国防総省によると、中国海軍が保有する艦艇は25年までに420隻、30年には460隻に達し、世界でも類を見ない海軍大国になろうとしている。
一方の米海軍は、有人艦艇321~372隻と無人艦艇を最大140隻維持する計画だが、形勢は不利になりつつある。中国はこうした艦艇を使って、近隣海域における石油や天然ガスの開発権を争う国々に嫌がらせもしている。
米国防総省は、中国が通常動力型潜水艦(高度な対艦ミサイルを搭載している)を増やしていることも懸念する。中国は25年までに、25隻もの元級攻撃型潜水艦の運用を開始する見通しだ。
核弾頭であれ何であれ、それを運ぶミサイルの性能の進歩は、アメリカにとって頭の痛い問題だ。中国本土から中距離弾道ミサイルが発射されれば、日本にある米軍基地の全てが射程内に入る。ミサイル防衛システムを構築するか否かをめぐり米国防総省で大きな議論になっているグアムも、弾道ミサイル「東風26」なら余裕で攻撃できる。
アメリカに挑戦しているのは明らか
それなのに、万が一のときにエスカレーションを防ぐ日頃のコミュニケーションが米中間には不足している。国防幹部間にホットラインは存在するものの、中国側は軍備増強の意図などの開示に極めて消極的だと、アメリカの国防幹部は嘆いている。
例えば、中国政府高官らは昨年夏、アメリカが南シナ海で紛争をあおっているのではないかと疑心暗鬼に陥り、複数の海域で軍事演習を実施した。このためマーク・エスパー国防長官(当時)は、チャド・スブラジア国防次官補(中国担当)とミリー、つまり国防総省の中国担当トップと制服組トップに、中国側とコミュニケーションを取って緊張を低下させるよう命じた。
これは、ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者とロバート・コスタ記者の共著『PERIL(ペリル)』で初めて明らかになったエピソードだ。
「中国が、地域的にアメリカ(の覇権)に挑戦していることは明らかだ。そしてその野心は、世界中でアメリカに挑戦することだ」と、ミリーは3日に語った。「彼らは、自由主義のルールに基づく秩序に挑戦したがっている。......それを変えたいのだ」
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら