欧州議会みごと!訪台によりウイグル問題を抱える中国を揺さぶる
10月21日、アメリカのCNNの記者に「台湾が中国に武力攻撃されたら、アメリカはどうしますか?」と聞かれたのに対して、バイデンは「アメリカには台湾を防御する責務がある」と回答した。するとサキ大統領補佐官が「台湾関係法には台湾を武力で防御するという条項は含まれておらず、アメリカは台湾関係法を変えたこともなければ変えるつもりもない」と火消しに追われた。
中国はバイデンがサプライチェーンの混乱や米国内での事情で焦っており、第二次世界大戦後支持率下降幅が最も高い大統領であるため、来年の中間選挙への影響を憂い、対中強硬発言に前のめりになっているのだろうと上から目線で見ている。
頼りは日本の自公連立政権
そこで中国が頼りにするのは日本の自公連立政権だ。
なんといっても中国政府が「最も親中的だ」とみなしている公明党が政権与党にいる。
10月27日のコラム<日本を中国従属へと導く自公連立――中国は「公明党は最も親中で日本共産党は反中」と位置付け>や26日の<習近平が喜ぶ岸田政権の対中政策>https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20211026-00265033などに書いたように、中国は公明党を通して自民党をコントロールしていくことができると考えている。
ウイグルの人権問題に対して制裁を加えることが可能になるマグニツキー法の成立を阻んだのも公明党だ。欧州議会が、こんなに勇猛果敢にウイグルの人権問題と闘っていても、日本は「中国に抵抗しません」と誓いを立てているようなものである。
11月4日のCCTVのお昼のニュースで欧州議会の訪台を無視した代わりに特集したのは、日本の松下電器(パナソニック)の本間哲朗氏(代表取締役専務執行役員中国・北東アジア社社長)への取材だった。松下電器(パナソニックだが、中国ではこの漢字表記を使っている)は初めて上海輸入博覧会に参加したようで、本間氏は中国を絶賛している。
政界には「親中」の自公連立があり、経済界には「中国なしでは生きていけない」企業が多い。
中国にとってこんなにありがたい国はないだろう。
岸田首相が果たして公明党の反対を抑えてマグニツキー法を成立させる方向で動くか否か、日本国民とともに注視していきたい。それにより岸田首相の覚悟のほどが試される。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。