最新記事

米選挙

行動力も人柄も鉄板のニュージャージー州知事が危うく負けそうになった衝撃

Phil Murphy Survives Close NJ Governor Vote

2021年11月4日(木)19時50分
ジョン・ジャクソン

しかしチャッタレリは、2020年11月に、トランプ所有のゴルフ場があるニュージャージー州ベッドミンスターで、「(バイデンは)選挙を盗んだ」と銘打ったトラプ派の集会に参加しており、マーフィー陣営はこの点を突いた。ニュージャージー州では、ニューヨーク州と同様、トランプはおおむね有権者に嫌われているからだ。

チャッタレリは集会に参加したことを認めたものの、集会の趣旨を知らなかったと言い訳した。10月にニュージャージー州ニューアークで行われたマーフィーの支持集会で、応援に駆けつけたバラク・オバマ元大統領はチャッタレリの苦しい言い逃れを痛烈に皮肉った。

「フィルの対立候補(チャッタレリ)は、前回の大統領選の結果をくつがえそうとする集会に、趣旨を知らずに参加したと言い張っている。知らなかった? 冗談だろう。会場入り口には『選挙を盗むな』という看板があり、参加者の中には南部連合の旗を振っている男がいたのだ。それを見て、ご近所のバーベキューパーティーだと思うバカがどこにいる?」

ニュージャージー州の有権者が重視したのは、トランプとの関係やバイデンに対する評価よりも、2つの主要な争点──税とコロナ対策だったようだ。

ガッツあるコロナ対応

チャッタレリはニュージャージー州の固定資産税の高さを問題にし、この州の住宅所有者は全米一高い税金を払っていると主張した。対してマーフィーはその事実をあっさり認め、税率が高くとも、税金は有効に使われ、州民は恩恵を受けているとメディアに語った。

「公立学校の水準は全米最高、医療システムも最高クラス。(教育、医療への)投資と思えば、誰でもぜひこの州に家を持ちたいと考えるだろう」

マーフィーはまた、コロナ禍のさなかで一貫して冷静な対応を取ったリーダーとして評価されている。今やセクハラ疑惑でその評判が地に落ちたニューヨークのアンドルー・クオモ州知事ほど派手な賞賛は浴びなかったにせよ、ぶれない姿勢は州民に好感を与えた。しかもマーフィーは腎臓癌の手術を受け、術後に意識が回復したときに病院のベッドで州内に最初の感染者が出たと知らされ、退院後ただちにコロナ対策の指揮をとったのだ。そのガッツは州民の信頼を勝ち得るに十分だった。

一方のチャッタレリは学校での生徒のマスク着用とワクチン接種の義務化に反対している。ニュージャージー州の世論調査ではこの2つは圧倒的な支持を得ているにもかかわらず、だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中