行動力も人柄も鉄板のニュージャージー州知事が危うく負けそうになった衝撃
Phil Murphy Survives Close NJ Governor Vote
しかしチャッタレリは、2020年11月に、トランプ所有のゴルフ場があるニュージャージー州ベッドミンスターで、「(バイデンは)選挙を盗んだ」と銘打ったトラプ派の集会に参加しており、マーフィー陣営はこの点を突いた。ニュージャージー州では、ニューヨーク州と同様、トランプはおおむね有権者に嫌われているからだ。
チャッタレリは集会に参加したことを認めたものの、集会の趣旨を知らなかったと言い訳した。10月にニュージャージー州ニューアークで行われたマーフィーの支持集会で、応援に駆けつけたバラク・オバマ元大統領はチャッタレリの苦しい言い逃れを痛烈に皮肉った。
「フィルの対立候補(チャッタレリ)は、前回の大統領選の結果をくつがえそうとする集会に、趣旨を知らずに参加したと言い張っている。知らなかった? 冗談だろう。会場入り口には『選挙を盗むな』という看板があり、参加者の中には南部連合の旗を振っている男がいたのだ。それを見て、ご近所のバーベキューパーティーだと思うバカがどこにいる?」
ニュージャージー州の有権者が重視したのは、トランプとの関係やバイデンに対する評価よりも、2つの主要な争点──税とコロナ対策だったようだ。
ガッツあるコロナ対応
チャッタレリはニュージャージー州の固定資産税の高さを問題にし、この州の住宅所有者は全米一高い税金を払っていると主張した。対してマーフィーはその事実をあっさり認め、税率が高くとも、税金は有効に使われ、州民は恩恵を受けているとメディアに語った。
「公立学校の水準は全米最高、医療システムも最高クラス。(教育、医療への)投資と思えば、誰でもぜひこの州に家を持ちたいと考えるだろう」
マーフィーはまた、コロナ禍のさなかで一貫して冷静な対応を取ったリーダーとして評価されている。今やセクハラ疑惑でその評判が地に落ちたニューヨークのアンドルー・クオモ州知事ほど派手な賞賛は浴びなかったにせよ、ぶれない姿勢は州民に好感を与えた。しかもマーフィーは腎臓癌の手術を受け、術後に意識が回復したときに病院のベッドで州内に最初の感染者が出たと知らされ、退院後ただちにコロナ対策の指揮をとったのだ。そのガッツは州民の信頼を勝ち得るに十分だった。
一方のチャッタレリは学校での生徒のマスク着用とワクチン接種の義務化に反対している。ニュージャージー州の世論調査ではこの2つは圧倒的な支持を得ているにもかかわらず、だ。