最新記事

日本政治

【総選挙ルポ】野党敗北のカギは、石原伸晃を破った東京8区にこそあった

2021年11月3日(水)19時13分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

東本の証言――「私が立憲の都連幹部に問うたのは、なぜ山本さんなら選挙区で勝てるのか。根拠を示してほしいということだった。これに対して、明確な答えは一切返ってこなかった。密室で候補者を決めて、名前を優先した選挙で小選挙区を勝とうなんて認識が甘すぎる。実際に選挙で実務を担うのは地域を知っている私たちだ。地域を回ってきた反応をみた上で、吉田さんで十分に勝てるし、山本さんではまとまらないと言ってきた」

彼らは彼らで、足元を固めるために共闘を前提に野党の候補者同士での勉強会を取り持ち、足で稼ぐために地元の回り方なども細かくプランを練っていた。主眼においたのは無党派層の取り込みだ。

固定票が見込める石原との対抗軸をどこに持ってくるか。政策だけでなく、「山形の八百屋の娘」という打ち出し方も足元の感触から周到に練られたものだった。山本との出馬調整を優先した立憲都連の対応は足元で地道に活動していた東本らの積み上げと明らかな温度差があった。

山本太郎をよく知る男

選挙戦の最中、ビラを受け取ったスーツ姿の男性はこんなことを言っていた。「へぇ八百屋の娘が、エリートの坊ちゃんに挑むのか。そいつは痛快だな」

結果は東本らの見方が正しかったことを示した。

211103ishido_03.jpg

新宿駅前で街頭の人々に語り掛けるれいわ新選組代表・山本太郎(10月24日) SOICHIRO KORIYAMA FOR NEWSWEEK JAPAN

第二の点は、立憲が読み誤った山本太郎の騒動の思わぬ副産物だ。そもそも山本サイドにとっても、東京8区からの出馬というのはベストシナリオとは言えなかった。

彼らは何を思い描いていたのか。私は東京都内のある喫茶店で、その一部始終を知る男と接触した。ツイードのジャケットにシャツ、赤いナイキのスニーカーを履いた男は「斎藤まさし」と名乗った――。

※記事後半につづく:総選挙で小さく勝ち大きく負けた野党、狙って得た「成果」は何もなかった

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中