【総選挙ルポ】野党敗北のカギは、石原伸晃を破った東京8区にこそあった
東本の証言――「私が立憲の都連幹部に問うたのは、なぜ山本さんなら選挙区で勝てるのか。根拠を示してほしいということだった。これに対して、明確な答えは一切返ってこなかった。密室で候補者を決めて、名前を優先した選挙で小選挙区を勝とうなんて認識が甘すぎる。実際に選挙で実務を担うのは地域を知っている私たちだ。地域を回ってきた反応をみた上で、吉田さんで十分に勝てるし、山本さんではまとまらないと言ってきた」
彼らは彼らで、足元を固めるために共闘を前提に野党の候補者同士での勉強会を取り持ち、足で稼ぐために地元の回り方なども細かくプランを練っていた。主眼においたのは無党派層の取り込みだ。
固定票が見込める石原との対抗軸をどこに持ってくるか。政策だけでなく、「山形の八百屋の娘」という打ち出し方も足元の感触から周到に練られたものだった。山本との出馬調整を優先した立憲都連の対応は足元で地道に活動していた東本らの積み上げと明らかな温度差があった。
山本太郎をよく知る男
選挙戦の最中、ビラを受け取ったスーツ姿の男性はこんなことを言っていた。「へぇ八百屋の娘が、エリートの坊ちゃんに挑むのか。そいつは痛快だな」
結果は東本らの見方が正しかったことを示した。
第二の点は、立憲が読み誤った山本太郎の騒動の思わぬ副産物だ。そもそも山本サイドにとっても、東京8区からの出馬というのはベストシナリオとは言えなかった。
彼らは何を思い描いていたのか。私は東京都内のある喫茶店で、その一部始終を知る男と接触した。ツイードのジャケットにシャツ、赤いナイキのスニーカーを履いた男は「斎藤まさし」と名乗った――。
※記事後半につづく:総選挙で小さく勝ち大きく負けた野党、狙って得た「成果」は何もなかった