最新記事

日本政治

【総選挙ルポ】野党敗北のカギは、石原伸晃を破った東京8区にこそあった

2021年11月3日(水)19時13分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

211103ishido_02.jpg

阿佐ヶ谷駅前のお立ち台に立つ自民党の石原伸晃と足早に去る人々(10月27日) SOICHIRO KORIYAMA FOR NEWSWEEK JAPAN

だが、ここで枝野の認識にはいくつかの疑問が付される。第一にそもそも野党側が本当に狙い通りに挙げた成果だったと言えるのか。第二に山本太郎が結果的にもたらしたものの効果、第三に自民党の戦略ミスだ。

第一の点から見ていこう。どう客観的にみても吉田が正式に統一候補になるまでの道のりは紆余曲折がありすぎた。

10月8日に突如、れいわ新撰組の代表・山本太郎が東京8区から出馬すると新宿駅前で発表した。彼自身は詳細を語らなかったものの、立憲側との調整は済んでいるという認識を示し、その場にいたあるジャーナリストはマイクを握り「立憲、共産から裏は取っている。山本さんが統一候補だ」と明言した。

これに対し、枝野はメディアを前にして「困惑している」と語った。さらに吉田の支援者からの抗議活動も活発化するなか、山本はわずか3日後に選挙区からの出馬を見送ると表明せざるを得なくなった。

一見すると山本のパフォーマンス、あるいは根回し不足に見える。だが、問題の本質はそこにはない。山本自身が明らかにしたように、2年前から8区からの出馬を打診していたのは立憲側だ。

東京8区で「市民連合」の役割を担っていた市民団体事務局の東本久子の証言がそれを裏付ける。彼女は8区の野党共闘について一貫して当事者としてかかわり、裏も表も精通したキーパーソンだ。

ちぐはぐな調整

東本が衆院議員会館で、立憲の都連幹部から「8区は山本太郎を統一候補でどうか。吉田は何らかの処遇をする」と最初に直接言われた時期は、山本の証言と符号する。彼女によれば、2020年に入ってからも交渉の過程で都連幹部は何度も「山本太郎」の名前を出してきたが、当の吉田本人や、共産側との話し合いも進んでいるようには見えなかったという。

事実、彼女の前で吉田自身は解散日程がメディアを賑わす時期になっても「私は絶対に8区で戦いたい」と口にしている。本人が「ノーコメントとさせてほしい」と答えたので、実際のところはわからないが「参院選立候補を打診された」といった噂が選挙区を駆け巡った。

8区から出馬を表明していた共産党の上保匡勇は「もともと、8区は野党共闘の対象ではなかった。立憲側からは私たちに候補者調整について何の打診もなかった。自分たちから降りようがない」と明かす。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中