自由・平等・博愛の国フランスで、移民をレイプ犯と呼ぶ極右が大躍進
A Trumpian Disaster?
ゼムールはフランス大統領選の構図を一気に変えるかもしれない ERIC GAILLARD-REUTERS
<右派のエリック・ゼムールが、移民排斥を唱えて急浮上。決選投票に進むシナリオも現実味を帯びてきた>
彼が本当に大統領になったりしたら「大惨事だ」と、フランスのある政界通は言い放った。彼とは、右派の政治評論家エリック・ゼムール(63)。来年4月に行われるフランス大統領選の有力候補として、急速に支持を広げている。
ゼムールは、パリ郊外のアルジェリア系ユダヤ人家庭に生まれた。移民とイスラム教の流入によってフランスが壊滅すると主張する著書が、ベストセラーになってもいる。
ゼムールはニュース専門局CNewsで人気のトーク番組を持ち、メディアでも派手に取り上げられている。CNewsは、右派系として知られる米FOXニュースのフランス版とも言える局。今年5月には、フランスのニュース専門局で初めて視聴率トップになった。
彼は「大置換」と称する陰謀説を公然と主張する。ヨーロッパ出身ではない非白人の移民が、白人に取って代わりつつあるというものだ。
昨年は番組の中で、移民の子供を「泥棒」「人殺し」「レイプ犯」と決め付けるような発言をした。同性愛者への嫌悪を口にして批判されたこともある。
こうした扇動的な言動は、FOXの番組『タッカー・カールソン・トゥナイト』に通じるものがある。番組ホストのカールソンもゼムールと同様の意見を表明して批判され、しかも米大統領選への出馬がささやかれている。
トランプと様々な共通点が
そのFOXに愛されたドナルド・トランプ前米大統領と類似点があることから、ゼムールは「フランス版トランプ」とも呼ばれている。
「トランプとの共通点は多い。テレビで知名度を高めたことや、女性に対する態度などだ」と、調査機関カンター・パブリックの国際世論調査部門を率いるエマニュエル・リビエールは言う。
「年配の保守層や富裕層と、いら立ちと不安を抱える白人労働者層の両方に受けがいいという類似点もある。フランスではこの15年で自民族中心主義の感情はおおむね衰えたが、ゼムールはあえて過激な主張を打ち出して支持を集めている」
大統領選の投票日は来年4月10日。過半数の票を獲得した候補がいなければ、その2週間後に上位2候補による決選投票が行われる。ゼムールはまだ出馬を表明していないが、既に支持率ではいい位置につけている。