アフガンで再興するイスラム国が、「中国」を次のテロ標的に定めた必然
China: The New Jihad Target
タリバンの権力掌握以降は宗教施設など公共の場への攻撃を激化させた。アフガニスタン人、インド人、タジク人、パキスタン人メンバーが攻撃に加わったケースもある。
IS-Kがアフガニスタン国内での攻撃の実行犯が(出身国の詳細は明らかにしていないものの)ウイグル人だと公然と認めたのは、クンドゥズ州の自爆テロが初めてだ。以前は、オンラインプロパガンダでも戦闘でもウイグル人民兵の姿は見掛けなかった。
ウイグル人は中国の新疆ウイグル自治区を拠点としチュルク語系の言語を話す少数民族で、イスラム教スンニ派が大部分を占める。自爆テロ実行犯の偽名「アル・ウイグリ」はウイグル人であることを示唆しているが、必ずしも新疆出身とは限らない。
普通、中国出身だと主張するウイグル人戦闘員は「アル・トルキスタニ」と名乗り、新疆に独立国家「東トルキスタン」を建設するという分離独立主義者の大義を強調する。ウイグル人社会は中国以外にもトルコやアフガニスタンなど多くの国に存在し、実行犯の出身国がそのいずれかであってもおかしくない。
ともかく、今回の自爆テロへのウイグル人の関与を強調することで、IS-Kは中国、タリバン、およびウイグルのタリバン系組織に重要なメッセージを送っている。
■「間接的憎悪」アプローチ
大義に身をささげるウイグル人戦闘員の存在を示すことで、IS-Kは中国の懸念をあおっている。ISが中国に注目したのは14年7月、当時の最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディが中国を「ジハード(聖戦)遂行」の戦場の1つに挙げたのが最初だ。翌15年11月にはシリアで人質にしていた中国人とノルウェー人を処刑。17年6月にもパキスタンで拉致した中国人教師2人の殺害を発表した。
だがそれ以降、ISの反中国的な活動は大部分、オンラインでの散発的なプロパガンダと行動の呼び掛けに限定されてきた。
ISのプロパガンダに中国やウイグルに焦点を当てたレトリックが比較的少なかったことは、主に2つの要因が考えられる。
まず、中国はアフガニスタンやイラク、シリアで対IS軍事作戦に参加しておらず、ISは彼らをそれほど脅威と見なしてこなかったようだ。代わりにISは欧米の連合軍との戦いを優先してきた。
さらに、ISとIS-Kはこれまでウイグル人の勧誘にかなり苦戦していた。しかし最近は人数が増えており、反中・親ウイグルのプロパガンダも増える可能性がある。中国はタリバンとの関係に関心を高めているとみられ、ISとIS-Kは中国を、「差し迫った敵」のリストに加えようと検討している。