アフガンで再興するイスラム国が、「中国」を次のテロ標的に定めた必然
China: The New Jihad Target
■タリバンとTIP
IS-Kのプロパガンダでウイグル人戦闘員が表に出てこなかったことは、彼らの勧誘について、ウイグル人組織トルキスタンイスラム党(TIP)に後れを取ってきたことが大きく関係している。25年近くタリバンの支援と庇護を受けてきたTIPは、アフガニスタンのウイグル人ジハード主義者のネットワークに対し、揺るぎない影響力を確立している。
一方で、シリアのISは、ウイグル人戦闘員の勧誘にそれなりに成功してきた。14~15年のISの最盛期には最大114人がシリアにいたとみられる。もっとも、この数字も、TIPのシリア部門に所属するウイグル人戦闘員の10分の1から20分の1にすぎなかった。
8月にタリバンが首都カブールを制圧するまで、TIPは約400人のウイグル人戦闘員を擁し、主に北東部のバダフシャン州ジュルム地区に集まっていた。ジュルムは山岳地帯のワハン回廊を介して、新疆ウイグル自治区との狭い国境に通じている。
TIPは独立したジハード主義グループながら、アフガニスタンでの活動は全てタリバンの指導と承認下にある。19年以降、アフガニスタンであまり目立った動きはない。
タリバンによるカブール制圧は、TIPをはじめとする世界中のジハード主義グループにとって、象徴的な瞬間だった。アフガニスタン政府の崩壊から数日後、TIPはタリバンの「勝利」と「イスラム首長国の復活」をたたえる声明を発表した。中国は国内の多くのテロ事件に関してTIPを非難しており、彼らの復活の可能性は安全保障上の重要課題になっている。
クンドゥズの自爆テロは、タリバンとTIPの関係にとっても重要な局面になった。
タリバンは中国からTIPとの関係を断つよう再三要求されたことを受けて、多くのTIPメンバーがアフガニスタンを離れたと発表している。一方で10月には、タリバンがウイグル人戦闘員を、バダフシャンから東部ナンガルハル州などに再定住させたという報道も複数出ている。
IS-Kはこうした未確認の動きに対する報復として、クンドゥズの自爆テロを正当化しようとしており、タリバンがジハード主義者の同胞を見捨てたという印象を与えている。これにTIPの過激派が反発すれば、IS-Kにとって、不満をくすぶらせた戦闘員を勧誘する絶好の機会になるだろう。