中国元高官告発で消息絶ったテニス選手から「私は無事」メール──信じるのはIOCだけ?
Olympic Committee Believes Peng Shuai is 'Safe,' WTA Demands Answers
ダブルスの世界ランキングで元1位の彭帥は「火に飛び込む」覚悟で告発すると書いていた Jerry Lai-USA TODAY Sports
<元副首相に性的暴行をされたという告発は「虚偽」で、「自分は無事だ」とするメールは本当に本人が書いたものなのか。テニス協会はますます彼女の身を案じるが、北京冬季五輪を控えたIOCは「無事でよかった」と言う>
中国の政府高官から性的暴行を受けたと告発して以降、行方不明になっている女子テニス選手の彭帥が11月17日、WTA(女子テニス協会)に「性的暴行の告発は虚偽だった」というメールを送ったとされている問題について、WTAは本人が送ったものではないのではないかと懸念している。AP通信が報じた。
彭帥は約2週間前に、中国政府の元高官から性的虐待を受けたと告発して以降、消息を絶っている。セクハラや性的暴行を告発する運動「#MeToo」が中国の政府高官に及ぶのは初めてのことで、政府は沈黙を貫いている。
国際オリンピック委員会(IOC)はWTAとは逆に楽観的な見方で、18日に発表した声明の中で「最新の報告で彼女の無事を確認し、心強く思っている」と述べた。
しかしWTAのスティーブ・サイモン会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国国営メディアが「彭帥からサイモン宛て」だとするメールについて、本人によるものとは思えないと疑問視した。メールは17日に、中国国営・中国中央電視台(CCTV)の英語放送、中国国際テレビ(CGTN)が公開したもので、この中で彭帥は、自分は無事で性的暴行の告発は虚偽だったと述べている。
サイモンはこれについて、「我々が受け取ったメールを、彭帥本人が書いたと信じるのは難しい。(今回報じられた)メールの内容を受けて、彼女の身の安全と行方に関する懸念は募る一方だ」とコメント。彼女が本当に無事かどうかを確認したいと、次のように述べた。「WTAをはじめ世界中が、彼女の安全を証明する証拠を求めている。私はこれまで繰り返し、さまざまな手段で彼女に連絡を試みてきたが、連絡は取れていない」
「#WhereisPengShuai(彭帥はどこに)」
サイモンは徹底した調査を要求しているが、中国外務省の趙立堅報道官は17日、記者からの質問に対して「その件については把握していない」と回答した。
以下にAP通信の報道を引用する。
WTAは、適切な対応がなされなければ中国からの撤退も辞さないとしている。この問題については、大坂なおみやノバク・ジョコビッチをはじめとするトッププレーヤーたちも声をあげており、ネット上では「#WhereisPengShuai(彭帥はどこに)」のハッシュタグがトレンド入りしている。
中国は(2018年に一瞬盛り上がりを見せた)#MeToo運動をほぼ抑圧し、人権活動家や海外の一部政治家は2022年2月の北京冬季五輪のボイコットを呼びかけているが、中国は開催に向かって突き進んでいる。
35歳の彭帥は女子ダブルスの元世界ランク1位で、2013年のウィンブルドン大会と2014年の全仏オープンで優勝を果たしている。
彼女は11月2日、中国版のツイッターである微博(ウェイボー)に長文を投稿。中国の元副首相で、中国共産党最高指導部のメンバー(政治局常務委員)だった張高麗から3年前に性的関係を強要されたと告発した。