EV新興企業リビアンはテスラの敵か、それとも味方か?
今年11月20日に、フォードがリビアンとのEV共同開発を中止との発表があった。フォードはリビアン株の約12%を持ち、両社はEV車両の共同開発や車台共有を進めていたが、一転して取りやめることになったのだ。
これに対して米メディアは、フォードが開発中のEVトラック「F150ライトニング」がリビアンの最初のEVピックアップトラック「R1T」と競合するからだとの報道一色になった。
しかし、この報道論調に著者は違和感を持つ。
メディアの近視眼的な論調
リビアンのR1Tにしても、フォードのEVトラックにしても、戦う敵は化石燃料エンジンのトラックのはずだ。まだ誕生してもいないEVトラック市場での戦いと見るのは近視眼的に過ぎず、そんなことではEVの裾野は広がらない。
フォードが進めるべきはリビアンのEVトラック叩きではなく、EVトラックへの注力であるべきだろう。
ところがマスコミは、EV同士のパイの食い合いにしたがっているようだ。
例えば、ウォールストリート・ジャーナルの11月15日の日本版は「テスラ対リビアン、純EVの投資家奪い合い」と書き立てた。
だが、リビアンとテスラは敵ではなく、EVシフトを進め持続可能社会の実現に挑む同志と捉えるべきだ。EV投資家を奪い合うのではなく、古いエネルギービジネスに出資してきた投資家たちをリビアンやテスラのEV事業側に呼び込むことが、地球にとって進むべき方向に他ならない。近視眼的な議論に埋没すれば、世界の大きな流れを見失ってしまう。
作家、経営コンサルタント。徳島大学工学部大学院修了。米国ノースウェスタン大学客員研究員。パナソニック、アップル・ジャパン、日本ゲートウェイを経てメディアリングの代表取締役などを歴任。
現在、ビジネスコンサルティング事務所「オフィス・ケイ」代表。著書に『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(ダイヤモンド社)、『TechnoKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営』(朝日新聞出版)など。