COP26が死守した「1.5度抑制」目標 達成になお高いハードル
11月13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が目指していたところは明白だった。つまり世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑え、気候変動がもたらす最悪の事態を回避するということだ。中国黒竜江省の省都ハルビン市で2019年撮影(2021年 ロイター/Muyu Xu)
13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が目指していたところは明白だった。つまり世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑え、気候変動がもたらす最悪の事態を回避するということだ。
採択された成果文書はこの条件を満たす内容になった。ただしあくまでぎりぎりの線であり、最終的にうまくいくかどうかは各国の今後の行動にかかっている。議長国を務めた英国の当局者やCOP26の参加者、専門家からはこうした厳しい見方が聞かれる。
シャルマCOP26議長は文書採択後、「それなりの信頼性がある形で1.5度以内の目標を維持したと言えるのではないか。しかし(今回の)上積み部分を巡る意気込みは低調であり、われわれは自らの約束を守ることでようやく生き残っていける」とくぎを刺した。
成果文書は200カ国近くが支持した。採択文書が地球温暖化の「主犯」とされる化石燃料を取り組みのターゲットとして明示したのは初めて。各国に温室効果ガス排出量削減の加速を求め、途上国の気候変動対策向け資金拠出を拡大すると表明した。また温室効果ガスの1つであるメタンの排出抑制や森林保護、環境関連金融の推進といった面で国家間、企業間、投資家間の自主的な約束と取り決めも積極的に促している。
とはいえ合意内容は妥協の産物になった。このため、よりスピード感のある対策を求めていた一部先進国から、資源が豊富にある発展途上国、海面上昇に脅かされる島しょ国まで、あらゆる関係者に不満が残ってしまった。国連のグテレス事務総長は成果文書について「現在の世界におけるさまざまな利害、条件、矛盾、国家の政治的意思が凝縮している。われわれは気候上の破局のドアを依然としてノックし続けている。緊急モードに移行する時期だ」と訴えた。
目標との大きなギャップ
COP26は、気温上昇を1.5度以内に抑える明確な道筋を定めるという意味では、各国から十分な排出量削減に関する約束を引き出せなかった。代わりに合意されたのは、来年の削減規模を拡大し、目標達成までの不足分を穴埋めしていくという姿勢だ。
だがそのギャップは非常に大きい。各国が現在、向こう10年で表明している排出量削減のままだと世界の気温は2.4度上がる。これを1.5度に抑えるには、世界全体で2030年までに排出量を10年の水準から45%減らさなければならない。
環境団体からは「COP26における妥協によって1.5度の目標が保たれたとはいえ、それは紙一重の状態だ」と懸念する声が出ている。