最新記事

環境

COP26が死守した「1.5度抑制」目標 達成になお高いハードル

2021年11月15日(月)13時31分

二酸化炭素排出量が世界最大の中国は先週の米国との共同宣言で、石炭使用やメタン排出の抑制、森林保護などを通じて排出量削減努力を強化する方針を打ち出したものの、いずれも具体策は明らかにしていない。

中国はCOP26の舞台では資源豊富な途上国の一角として、化石燃料削減を巡る成果文書の表現を弱める役回りも演じている。例えば文書の素案では、各国が石炭使用と化石燃料向け補助金を段階的に「廃止」すると記されていたが、石炭については「排出削減対策が取られていない石炭」に修正され、二酸化炭素貯留・回収技術を利用すれば石炭を使える余地が残された。補助金も「非効率な補助金」に改められ、同時に何が非効率か定義されなかったため、各国が石油やガス、石炭向け補助金で裁量を働かせることが可能になっている。

成果文書を巡る協議では中国とインドによる土壇場の介入で、石炭火力の「段階的廃止」が「段階的削減」に変更された。

途上国の期待と不安

先進国が行う途上国の気候変動対策への資金支援の面でも進展があった一方、幾つかの課題が残された。

この問題は結局、公平性に関する話になっている。先進国が過去に排出した温室効果ガスが今の気候変動の大きな原因となっている中で、途上国に要求している対策の費用を先進国が負担する気があるかどうかが問われているからだ。

その点で今回、先進国に合計支援規模を19年の水準から25年までに「少なくとも2倍」にするよう促したのは一定の前進だった。さらに小さな島しょ国や途上国が補償を求めている気候変動絡みの災害のコストについて「被害と損失」として初めて言及した。もっとも米国、欧州連合(EU)などの抵抗で、そうした補償金を確保する段階には至っていない。

気候変動対策支援では、先進国は年間1000億ドルを20年までに拠出するとした09年の約束を守っておらず、途上国側は23年までの支払いを期待しつつ、資金が届かないのではないかとの不安も抱いている。

(Kate Abnett記者、Valerie Volcovici記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中