最新記事

環境

COP26が死守した「1.5度抑制」目標 達成になお高いハードル

2021年11月15日(月)13時31分
中国黒竜江省の省都ハルビン市

11月13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が目指していたところは明白だった。つまり世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑え、気候変動がもたらす最悪の事態を回避するということだ。中国黒竜江省の省都ハルビン市で2019年撮影(2021年 ロイター/Muyu Xu)

13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が目指していたところは明白だった。つまり世界の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑え、気候変動がもたらす最悪の事態を回避するということだ。

採択された成果文書はこの条件を満たす内容になった。ただしあくまでぎりぎりの線であり、最終的にうまくいくかどうかは各国の今後の行動にかかっている。議長国を務めた英国の当局者やCOP26の参加者、専門家からはこうした厳しい見方が聞かれる。

シャルマCOP26議長は文書採択後、「それなりの信頼性がある形で1.5度以内の目標を維持したと言えるのではないか。しかし(今回の)上積み部分を巡る意気込みは低調であり、われわれは自らの約束を守ることでようやく生き残っていける」とくぎを刺した。

成果文書は200カ国近くが支持した。採択文書が地球温暖化の「主犯」とされる化石燃料を取り組みのターゲットとして明示したのは初めて。各国に温室効果ガス排出量削減の加速を求め、途上国の気候変動対策向け資金拠出を拡大すると表明した。また温室効果ガスの1つであるメタンの排出抑制や森林保護、環境関連金融の推進といった面で国家間、企業間、投資家間の自主的な約束と取り決めも積極的に促している。

とはいえ合意内容は妥協の産物になった。このため、よりスピード感のある対策を求めていた一部先進国から、資源が豊富にある発展途上国、海面上昇に脅かされる島しょ国まで、あらゆる関係者に不満が残ってしまった。国連のグテレス事務総長は成果文書について「現在の世界におけるさまざまな利害、条件、矛盾、国家の政治的意思が凝縮している。われわれは気候上の破局のドアを依然としてノックし続けている。緊急モードに移行する時期だ」と訴えた。

目標との大きなギャップ

COP26は、気温上昇を1.5度以内に抑える明確な道筋を定めるという意味では、各国から十分な排出量削減に関する約束を引き出せなかった。代わりに合意されたのは、来年の削減規模を拡大し、目標達成までの不足分を穴埋めしていくという姿勢だ。

だがそのギャップは非常に大きい。各国が現在、向こう10年で表明している排出量削減のままだと世界の気温は2.4度上がる。これを1.5度に抑えるには、世界全体で2030年までに排出量を10年の水準から45%減らさなければならない。

環境団体からは「COP26における妥協によって1.5度の目標が保たれたとはいえ、それは紙一重の状態だ」と懸念する声が出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中