最初の兆候は軽い喋りづらさ...平均余命1~3年とされても鉄人レースを完走した男性
Completing an Ironman with ALS
7月にALSと診断され、2カ月後にアイアンマン・レースを走り切った PATRICK MCDERMOTT/GETTY IMAGES FOR IRONMAN
<球麻痺型ALSと診断されても生活は変わらない。今も体をいい状態に保ちトレーニングを続けられる>
最初に気付いたのは2020年12月。ほんの少し話すことに問題が生じたが、私以外は誰も気付かなかった。疲労やストレスのせいかと思ったが、症状はさらに進んだ。看護師の妻と相談して21年3月半ば、医師の診察を受けた。
MRIなどの検査を受けたが、何も問題はないと言われた。私はアイアンマン・レースに向けたトレーニング中で、体調は極めて良好だった。
その後、何人もの医師に診てもらったが、診断はさまざまだった。そして7月半ば、ある専門医に「球麻痺型筋萎縮性側索硬化症(球麻痺型ALS)」だと告げられた。
私は本を読み、インターネットで検索してみた。それによると、球麻痺型ALS患者の平均余命は1~3年。だが平均がどうであれ、自分がどうなるかは分からない。人間は一人一人違うのだから。
妻と私の生活に大きな変化はない。私には息子が1人、妻には4人の子供がいる。今もフルタイムで好きな仕事をしているし、妻と一緒に高校のマウンテンバイクチームのコーチもやっている。
実はALSと診断された7月のあの日に、私たちは婚約した。帰りの車中で今の妻と20分ほどで結婚式の計画を立て、3週間後の8月7日、ある山の頂で式を挙げた。私たちは自転車で山を登り、50人ほどが伴走してくれた。さらに50~75人が車で集まった。
結婚式が終わり、みんなが下山した後、息子と妻と私の3人だけが残った。夕日が沈むなか、白いドレスに身を包んだ妻が総延長約20キロ、高低差1500メートルほどの坂道を自転車で爆走する姿を目にしたことは、一生の思い出だ。
病気の症状で泳ぎに支障が
結婚準備と同時にアイアンマン・レースのトレーニングをするのは大変だった。球麻痺型ALSは、喉、舌、唇、口の周りが最も影響を受ける。泳ぐときに呼吸が苦しくなるので、泳法を工夫し、安全のために妻と一緒に泳いだ。
ユタ州セントジョージで開催されるアイアンマン70.3世界選手権は1.2マイル(1.9キロ)のスイム、56マイル(90.1キロ)のバイク、13.1マイル(21.1キロ)のランで構成されており、まず出場資格を獲得しなければならない。
今回のゴールは奇妙な体験だった。いつもは走り抜けるのに、私はためらった。