最新記事

感染

新型コロナに335日、感染しつづけた......慢性化が変異株生むとの指摘も

2021年11月5日(金)15時40分
青葉やまと

患者の免疫力が低い場合、ウイルスは体内で通常と異なる発達を遂げることがある。長期にわたる感染と組み合わさると、変異の温床となる懸念がある。本件で感染後期に採取された新型コロナウイルスのRNAサンプルでは、スパイクタンパク質に関わる塩基が変異していたほか、それ以外の部分でも約3万塩基のうち500塩基ほどが消失していた。

米学術誌『サイエンス』は本件を、「新型コロナへの慢性的な感染」であるとしている。ケンブリッジ大学のラヴィンドラ・グプタ教授(免疫治療学)は同誌に対し、「新たな変異株は依然として脅威」であり、少なくともいくつかの変異株については「慢性の感染が原因となっている」と指摘する。

グプタ教授は、イギリスで猛威を振るったアルファ株についても、免疫力が低下していたある患者から発現した可能性があると述べている。同患者は回復期患者から採取した血しょうの投与を受けており、これもウイルスに変化を引き起こす誘因になったのではないかとの見解だ。

昨年12月には医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』において、新型コロナとの154日間の闘病の末に亡くなった患者の例が取り上げられている。継続的な感染により、スパイクと受容体への結合部分を中心とした「加速度的なウイルスの進化」が起きた、と論文は指摘する。この例では、アルファ・ガンマ・デルタ株が一般に定着する以前にすでに、これらの変異株における特徴的な変異が認められたという。

現在WHOは、ワクチン接種後のブレークスルー感染を防止する目的で、免疫不全者に対するブースター接種を推奨している。ウイルスに対してぜい弱な人々を保護することは当然重要だが、さらに間接的な効果として、慢性化のリスクを低減し変異株の発生を抑止することにもつながるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ

ワールド

焦点:「化粧品と性玩具」の小包が連続爆発、欧州襲う

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 7
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 10
    関税ショックは株だけじゃない、米国債の信用崩壊も…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中