「数字並べただけで戦略なし」 COP26でのブラジル気候変動目標に厳しい見方
同氏はさらに、たとえブラジルがこの新しい目標を達成できるとしても、アマゾンの一部地域ではすでに大規模な森林破壊によって大量の枯死現象が生じているとみられ、手遅れかもしれないと警告する。
ボルソナロ大統領の環境問題に関する論調がこれまで敵対的だったことから考えれば、今年のCOP26に臨むブラジルの姿勢には変化がうかがえる。だが、かつて「環境対策のリーダー」だった同国が復権するにはほど遠い状態だ。
グローバルな気候変動を巡る交渉全般の基礎を確立した1992年の国連環境開発会議(「地球サミット」)は、ブラジルのリオデジャネイロで開催された。さらにブラジルは2010年代初頭、森林破壊を大幅に減らして世界に模範を示すことで声望を高めた。
だが、気候変動枠組み条約に署名した大半の国々の首脳と違い、ボルソナロ大統領はグラスゴーに姿を現さなかった。
ブラジルが示した目標への批判について大統領府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
なるほど、今年のCOP26でのブラジルの存在感は非常に大きい。政府・企業ロビー組織共同で設置した緑の葉で覆われたブースには巨大な双方向性スクリーンが設置され、外務、エネルギー、環境各省の当局者が定期的に一般向けのスピーチを行っている。
だが、ブースに掲げられたアジェンダからは、ブラジルの立場の変化はほとんど見えてこない。3日、コーヒーを楽しむ訪問客を前に、当局者はバイオ燃料政策の宣伝に終始した。農業ビジネス界から強く支持されているバイオ燃料だが、専門家の見解では、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためには、バイオ燃料とは決別する方針転換が必要だという。
イザベラ・テイシェイラ元環境相によれば、ブラジルの森林破壊防止案は細部が煮詰められておらず、現実味を欠いているという。
「数字が示されているだけで、戦略がまったくない」と同氏は言う。
求められる変化は
環境活動家が根本的な変化を期待している国はブラジルだけではない。温室効果ガス排出量が世界第4位のロシアには地球上の森林の約5分の1が存在しているが、ここ数年、大規模な山火事に見舞われている。
ロシアによれば、国内の森林による年間炭素吸収能力は二酸化炭素換算で約6億トン相当だが、山火事と伐採により約半分が失われているという。